【院長ブログ】インフルエンザB型がついに逆転!A型を上回る ―1月第4週データで見る今後の対策
大寒を過ぎ、一年で最も寒さが厳しい時期となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。先日のブログ記事で「B型インフルエンザ増加の兆し」についてお伝えしましたが、その後約2週間が経過し、愛媛県の最新データ(1月第4週)では、ついにB型の報告数がA型を上回る事態となりました。
外来でも、「11月にインフルエンザA型にかかったばかりなのに、また高熱が出ました」と訴える患者さんが急増しています。いわゆる「今シーズン2回目のインフルエンザ」です。本日は、この最新状況を踏まえ、なぜ今B型が急増しているのか、そして家庭でできる具体的な対策や、ご高齢の方・神経疾患をお持ちの方への配慮についてお話しします。
なぜ今、B型インフルエンザが急増しているのか?
まず、愛媛県感染症情報センターが発表した第4週(1月19日〜25日)のデータによると、県内のインフルエンザ定点当たり報告数は22.08人となり、依然として警報レベルが続いています。これまではA型が圧倒的多数を占めていましたが、第4週ではA型364件に対し、B型が394件と、今シーズン初めてB型がA型を上回りました。
保健所管内別に見ると、西条保健所や中予保健所で急増が見られ、今治・松山市保健所管内でも着実に増加しています。全国平均の定点当たり報告数が16.64人であることを踏まえると、愛媛県は全国的に見ても流行の勢いが強い地域と言えます。
今シーズンの特徴として、A型の流行が例年より早かったことが挙げられます。それに伴い、例年であれば2月〜3月にピークを迎えるB型の流行も前倒しになっています。さらに、1月下旬の寒波と乾燥がウイルスの生存に適した環境を作り出し、感染拡大を後押ししていると考えられます。
「11月にA型にかかったのに、また高熱が…」その理由
外来で時に耳にするのが、「私もう今年はインフルエンザにかかったから大丈夫だと思っていたんです」という言葉です。残念ながら、インフルエンザA型とB型は、ウイルスの種類が全く異なります。そのため、A型に感染して獲得した免疫(抗体)は、B型に対しては効果を発揮しません(交差反応がないと言います)。
現在の流行パターンとしては、シーズン前半にA型に罹患し、この時期にB型に罹患する「A型→B型」のケースが最も一般的です。しかし、今年は流行が複雑化しており、稀ではありますが「B型→A型」の順で感染するケースや、同じA型の中でも「H1N1型→H3N2型」と異なる亜型に連続して感染するケースも報告されています。
また、家庭内でも「お兄ちゃんはA型だったのに、妹はB型にかかった」というように、家族間で異なる型のウイルスが持ち込まれ、時間差で感染が広がるケースも散見されます。「一度かかったから安心」という油断が、かえって感染リスクを高めてしまう可能性があるのです。
家族を守るために今日からできること:家庭内感染を防ぐ実践ガイド
前回のブログでは基本的な予防策をお伝えしましたが、ここではより踏み込んで具体的な実践方法をご紹介します。
1. 家族が発症した場合の対応
家族の誰かが発症した場合、最初の24時間が勝負です。可能であれば個室に隔離し、食事や就寝のスペースを完全に分けます。住宅事情で個室が難しい場合は、カーテンやパーティションで仕切るだけでも、飛沫の直接的な到達を防ぐ効果があります。
また、看病する人はできるだけ一人に固定しましょう。理想的には、過去にインフルエンザワクチンを接種済みの方や、今シーズン既に同型のインフルエンザに罹患した方が担当するのが望ましいですが、難しい場合はマスクと手洗いを徹底した上でケアにあたってください。
2. 換気と加湿の重要性
「換気」と「加湿」はセットで行う必要があります。密閉された部屋ではウイルス濃度が高まりますが、1〜2時間に1回、5分程度窓を開けて換気を行うだけで、室内のウイルス濃度を大幅に下げることができます。
同時に、湿度の管理も重要です。厚生労働省のガイドラインでも示されている通り、湿度50〜60%を保つことで、インフルエンザウイルスの生存率は著しく低下します。ただし、加湿のしすぎはカビの原因となり、別の健康被害(アレルギー性肺炎など)を引き起こす可能性があるため、湿度計を見ながら調整してください。
3. 免疫力維持のための生活習慣
ウイルスの侵入を防ぐだけでなく、侵入されても発症しない、あるいは重症化させない「免疫力」が鍵となります。ビタミンC(柑橘類など)やビタミンD(きのこ類、魚類)を意識的に摂取し、体を温める食事(生姜、ネギ、根菜類)を心がけましょう。そして何より、7〜8時間の十分な睡眠が免疫強化に有効です。
発熱時の判断基準:「様子を見る」べきか「すぐ受診」すべきか
発熱した際、いつ病院に行くべきか迷われる方も多いと思います。適切なタイミングを知っておくことは、正確な診断と効果的な治療につながります。
発熱後の経過時間別対応
| 経過時間 | 検査の精度 | 推奨される行動 |
|---|---|---|
| 0〜6時間 | 低い | ウイルス量が少なく、検査で陰性(偽陰性)が出やすい時間帯です。水分を摂って自宅で安静にしてください。 |
| 6〜12時間 | 中程度 | 高熱でぐったりしている場合などは受診を検討してください。検査キットの性能向上により判定できることもあります。 |
| 12〜48時間 | 高い(最適) | 受診に最も適したタイミングです。抗インフルエンザ薬の効果も最大限に期待できます。 |
| 48時間以上 | 高い | 抗ウイルス薬の効果は低下しますが、合併症の有無を確認するため、症状が重い場合は受診してください。 |
即座に受診すべき警告サイン
経過時間に関わらず、以下の症状がある場合は緊急性が高いため、速やかに医療機関を受診、あるいは相談してください。
- 成人:呼吸困難、胸の痛み、意識がぼんやりする、39度以上の高熱が3日以上続く。
- 小児:呼吸が速い・苦しそう、顔色が悪い、嘔吐や下痢が続いて水分が取れない、けいれんを起こした。
- 高齢者: いつもと様子が違う。高齢者では「なんとなく元気がない」「食欲がない」といった非典型的な症状のみの場合も
B型インフルエンザ特有の注意点
B型インフルエンザは、A型に比べて高熱が出にくい一方で、腹痛や下痢などの消化器症状が強く出ることがあります。「お腹が痛いだけで熱は微熱だから、ただの胃腸炎だろう」と自己判断せず、流行期にはインフルエンザの可能性も疑って受診を検討してください。
脳神経内科医からみた注意が必要な方々
当院は内科に加え、脳神経内科・リハビリテーション科を標榜しております。神経疾患をお持ちの患者さんやそのご家族には、インフルエンザに際して特に注意していただきたい点があります。
認知症患者さんの場合
認知症の方は、ご自身で「寒気がする」「体がだるい」といった症状を正確に言葉で伝えられないことがあります。ご家族や介護者の方は、食欲の低下、活動量の減少、表情の変化など、「いつもと違う様子」がないか注意深く観察してください。毎日の体温測定を習慣化することも早期発見に有効です。
パーキンソン病・神経難病の患者さんの場合
パーキンソン病の患者さんは、嚥下機能(飲み込む力)が低下していることが少なくありません。インフルエンザに罹患して体力が落ちると、唾液や食べ物を誤って気管に入れてしまい、「誤嚥性肺炎」を併発するリスクが格段に高まります。
また、発熱時であっても、パーキンソン病のお薬は自己判断で中断せず、できるだけ定時に服用してください。急な服薬中止は、体が動かなくなるだけでなく、高熱を伴う「悪性症候群」という危険な状態を引き起こす可能性があります。
脳卒中後遺症の患者さんの場合
在宅でリハビリを頑張っている方も多いと思いますが、発熱や体調不良時は無理をせず、リハビリをお休みする勇気も必要です。体力が低下している状態で無理に体を動かすと、転倒のリスクや心肺機能への負担が増加します。再開のタイミングについては、主治医や担当のセラピストにご相談ください。
当院でできること:早期発見と適切な治療
うめもとクリニックでは、発熱外来において迅速検査キットを使用し、約15分でA型・B型の判定を行っております。重症化リスクの高い方は多項目PCR検査も行っております。治療においては、患者さんの年齢や症状、生活背景に合わせて最適な抗インフルエンザ薬を選択します。
前回のブログでご紹介した通り、B型インフルエンザに対しては、1回の内服で治療が完結する「ゾフルーザ」が、従来のタミフル等と比較して症状の早期改善に有効であるというデータがあります。
まとめ:インフルエンザから身を守るために
「今シーズン2回目のインフルエンザ」も、正しい知識と適切な対策があれば、感染リスクを大きく減らすことは可能です。特に、高齢者の方や神経疾患をお持ちの方は、少しでも「いつもと違う」と感じたら、早めにご相談ください。まだまだ寒い日が続きますが、どうぞお体を大切にお過ごしください。
【参考資料】
- 愛媛県感染症情報センター「インフルエンザ情報(2025/2026シーズン)」
- 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」
- 松山市医師会「週間疾患情報」
