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【院長ブログ】インフルエンザB型が増加の兆し~現在の流行状況と受験生のワクチン接種~

[2026.01.18]

2026年1月後半に入り、この時期になると毎年話題に上がるのがインフルエンザの動向です。例年は「シーズン前半はA型、後半にB型」という流れが一般的でしたが、今シーズンは年明け早々からB型の報告が増え始めています。ニュースなどの報道でも「ピーク前倒し」や「B型の早期増加」が取り上げられております。

特に受験生を抱えるご家庭にとっては、気が気でない時期かと思います。本日は、この少し異例とも言える2026年1月現在の流行状況と、B型インフルエンザの特徴や治療、そして「今からでもワクチンを打つべきか」という疑問について、お話しさせていただきます。

2026年1月のインフルエンザ流行とB型インフルエンザの懸念

厚生労働省や東京都感染症情報センターのデータによると、今シーズンは全体として流行入りが早く、そのピークも前倒しになる傾向があります。現在も主流は依然としてA型(特にH3N2亜型、サブグレードKなど)ですが、例年であれば2月から3月にかけて増えてくるB型が、今年はすでに1月の段階で増加傾向にあります。

これは、一度A型に感染して回復した直後でも、免疫のないB型に再び感染するリスクがあることを意味しており、いわゆる「今シーズン2度目のインフルエンザ」という事態が起こりやすい状況です。松山市周辺の定点観測データを見ても、A型の報告は減りつつあるものの、じわりとB型の検出例が増えております。

 

B型インフルエンザの特徴:症状と注意点

「インフルエンザといえば高熱と関節痛」というイメージが強いですが、B型には少し違った特徴があります。

B型インフルエンザの消化器症状

A型インフルエンザは38度以上の急激な発熱や強い全身倦怠感、関節痛が典型的です。対してB型は、もちろん発熱も見られますが、A型ほど高熱にならないケースも少なくありません。その代わりにお腹に来る症状、つまり腹痛、下痢、嘔吐といった消化器症状が強く出ることがあります。

胃腸炎との誤認に注意

この消化器症状が厄介な誤解を生むことがあります。「熱はそこまで高くないし、お腹が痛いからウイルス性胃腸炎(ノロウイルスなど)だろう」と自己判断してしまうケースです。

診断が遅れると、適切な抗インフルエンザ薬を使用するタイミング(発症から48時間以内)を逃してしまいます。また、本人が「ただのお腹の風邪」だと思って学校や塾へ行ってしまうことで、周囲にB型インフルエンザを広げてしまうリスクもあります。特に今の時期、周囲には受験生がいるかもしれません。「いつもの風邪と違う」「お腹の調子がおかしいが熱もある」という場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが極めて重要です。

インフルエンザワクチン:今からでも間に合う?効果は?

ご高齢の方や基礎疾患をお持ちの方はワクチン接種を推奨します

今シーズンのインフルエンザワクチンには、A型2株に加えてB型の抗原も含まれています。まだワクチンを接種されていない方、あるいは既にA型インフルエンザに罹患されたものの、これから流行が予想されるB型が心配という方は、今からでもワクチン接種を検討されることをお勧めいたします。

特にご高齢の方や糖尿病、呼吸器疾患、心疾患などの基礎疾患をお持ちの方は、インフルエンザに罹患すると重症化するリスクが高まります。ワクチンは発病を完全に防ぐものではありませんが、重症化や肺炎などの合併症を予防する効果が期待できます。また、一度A型に感染した方でも、B型に対する免疫は別ですので、B型対策としてのワクチン接種は意義があります。接種後約2週間で免疫が得られ、効果は約5ヶ月持続しますので、これからの流行期にも対応できます。

受験生とそのご家族へのアドバイス

受験シーズン本番を迎え、親御さんから最も多くいただく質問が「今からワクチンを打っても間に合いますか?」「効果はありますか?」というものです。

医学的に見て、インフルエンザワクチン接種後、抗体が上昇して十分な免疫ができるまでには約2週間かかり、その効果は約5ヶ月持続するとされています。これから2月、3月にかけての国公立大学の二次試験や高校入試後期日程を見据えるならば、今から接種しても遅すぎるということはないと考えます。また、万が一感染した場合でも、ワクチンを接種していれば重症化を防ぎ、発熱期間を短縮できる可能性が高まります。受験生にとって、体調不良で寝込む期間を1日でも短くすることは大きな意義があります。

家庭でできるインフルエンザの予防と対策

ワクチン以外の日々の対策も重要です。受験生がいるご家族は、ウイルスを持ち込まないことが何よりの予防になります。

基本的な感染対策

マスクの着用、手洗いうがい、そして適切な加湿が重要です。これらは新型コロナウイルス対策で日常化しましたが、インフルエンザ予防としても変わらず有効です。特に湿度は50〜60%を保つよう心がけてください。乾燥は気道粘膜の防御機能を低下させます。

早期受診の重要性

もし家族の誰かが発熱した場合、あるいは受験生本人が体調を崩した場合は、速やかに受診してください。抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に服用することで最大の効果を発揮します。現在は様々な種類の抗インフルエンザ薬がありますが、いずれも早期投与が鉄則です。

家庭内隔離の準備

万が一家族が発症した場合に備え、部屋を分ける、食事を別にする、タオルを共有しないといったシミュレーションをしておきましょう。特にトイレやドアノブの消毒は、接触感染を防ぐ上で有効です。

B型インフルエンザの治療:抗インフルエンザ薬の選び方

B型インフルエンザと診断された場合、治療の基本は抗インフルエンザ薬の投与です。現在日本で使用できる主な薬剤には、タミフル(オセルタミビル)、リレンザ(ザナミビル)、イナビル(ラニナミビル)、そしてゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)があります。

従来からある抗インフルエンザ薬(タミフル等)

タミフル、リレンザ、イナビルはいずれもノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬剤です。これらはウイルスが細胞から放出されるのを抑える働きがあり、A型・B型の両方に有効です。発症から48時間以内に使用することで、発熱期間を短縮し症状を軽減させる効果が期待できます。

タミフルは内服薬で1日2回、5日間の服用が必要です。一方、イナビルは吸入薬で1回の吸入のみで治療が完結します。リレンザも吸入薬ですが1日2回、5日間の使用が必要です。これらの薬剤は治療薬としての歴史も長く、私たち臨床医にとっても使い慣れた薬です。特にタミフルは後発医薬品も利用可能で薬価も安価であり、現在もインフルエンザ治療の中核を担っています。

ゾフルーザの特徴とB型インフルエンザへの有効性

2018年に承認されたゾフルーザは、これまでの薬とは異なる作用機序を持つ新しい抗インフルエンザ薬です。キャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素を阻害することで、ウイルスの増殖そのものを抑える働きがあり、単回投与で治療が完了するという大きな利点があります。

では、ゾフルーザとタミフルどちらが良いのでしょうか。国際共同第III相臨床試験(CAPSTONE-2試験)では、全体としてはインフルエンザ罹病期間に有意差はなかったものの、B型インフルエンザ患者における部分集団解析では、ゾフルーザはタミフルに対してインフルエンザ罹病期間を有意に短縮しました。

日本小児科学会の2025/26シーズン治療指針でも「特にB型インフルエンザについてはオセルタミビル(タミフル)と比べ有熱期間が短いことが複数の報告で確認されている」と記載されており、12歳以上の小児では「B型インフルエンザに対しては他剤より優位である」と評価されています。さらに、ゾフルーザはウイルス排出期間も短縮させることから、周囲への感染拡大リスクを早期に抑えられる点も評価されています。

特にB型インフルエンザは先述の通り消化器症状を伴いやすいため、吐き気や嘔吐があっても単回投与で済むゾフルーザは、服薬コンプライアンスの面でも優れています。ただし、12歳未満の小児では薬剤耐性ウイルスの出現頻度が高いことから慎重な判断が必要であり、個々の患者さんの年齢、症状、基礎疾患の有無などを総合的に判断して最適な薬剤を選択することが重要です。

まとめ

2026年のインフルエンザシーズンは、A型の流行に加え、B型の早期増加という難しい局面を迎えています。

「お腹の調子が悪いけれど熱がある」「家族がインフルエンザにかかったかもしれない」「今からでもワクチンを打ちたい」など、不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。早めの行動が、大切な受験や日常生活を守ることにつながります。地域の皆様が健康に冬を乗り切れるよう、スタッフ一同お祈りしております。

 

参考文献

1. 厚生労働省「インフルエンザ報道発表資料 2025/2026シーズン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html

2. 東京都感染症情報センター「インフルエンザの流行状況」
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/

3. 国立健康危機管理研究機構「高齢者に対するインフルエンザワクチン ファクトシート」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrd/11916-flu-vaccine-elderly-2024.html

4. Hayden FG, Sugaya N, Hirotsu N, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med. 2018;379(10):913-923.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1716197

5. Ison MG, Portsmouth S, Yoshida Y, et al. Early treatment with baloxavir marboxil in high-risk adolescent and adult outpatients with uncomplicated influenza (CAPSTONE-2): a randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Infect Dis. 2020;20(10):1204-1214.
https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30004-9

6. 日本小児科学会「2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」2025年10月7日
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=655

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