【院長ブログ】フルミストの接種が始まっています〜鼻スプレー型インフルエンザワクチン〜
朝夕の冷え込みが感じられる季節となりました。当院では昨年に引き続いて今年も「フルミスト」の接種を開始しており、早速接種を希望されるお子様が来院されています。「子どもが注射を怖がってワクチンを嫌がっていた」「毎年泣いて暴れるので親子共に大変だった」そのようなご家族にぜひ知っていただきたいのが、鼻にスプレーするだけで接種できる新しいインフルエンザワクチン「フルミスト」です。今回は、このフルミストの特徴と当院での接種についてご説明いたします。
フルミストとは?〜注射しないインフルエンザワクチン〜
フルミストは、鼻の中にスプレーするだけで接種できる、世界初の経鼻インフルエンザワクチンです。従来の注射型ワクチンとは異なり、針を使わないため、注射の痛みや恐怖を感じることなく接種できるのが最大の特徴です。
「生ワクチン」という種類のワクチンで、弱毒化したインフルエンザウイルスを鼻の粘膜に直接投与します。これにより、実際のインフルエンザウイルスが侵入する経路である鼻や喉の粘膜に免疫を作ることができるのです。従来の注射型ワクチンは血液中に抗体を作るのに対し、フルミストは侵入口である粘膜に直接免疫を作るため、より自然な形での免疫獲得が期待できます。
アメリカやヨーロッパでは約20年以上の使用実績があり、特に小児への接種において高い効果と安全性が確認されています。日本では2024年に承認され、2025年シーズンから本格的に使用可能となりました。対象年齢は2歳から18歳までのお子さんで、特に注射を怖がるお子さんや、発達障害などで注射の痛み刺激に敏感なお子さんにとって、非常に有効な選択肢となっています。
フルミストの効果〜従来のワクチンと比べてどうなのか?〜
「注射じゃないワクチンは効果が弱いのでは?」とご心配される保護者の方もいらっしゃいますが、実際にはフルミストの効果は従来の注射型ワクチンと同等、あるいは小児においてはそれ以上の効果が報告されています。
アメリカでの大規模研究によると、2歳から8歳の小児では、フルミストは従来の不活化ワクチン(注射型)と比較して、インフルエンザ発症予防効果が約55%高いという結果が示されています。これは、鼻や喉の粘膜に直接免疫を作ることで、ウイルスの侵入を水際で防ぐことができるためと考えられています。
また、従来の注射型ワクチンは毎年接種が必要ですが、フルミストも同様に毎年の接種が推奨されています。免疫がつくまでの期間は、接種後約2週間です。インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行のピークを迎えますので、11月中の接種完了が理想的です。当院では現在フルミストの在庫がございますが、なくなり次第終了となりますので、お早めのご予約をお勧めいたします。
接種前に確認すること〜フルミストを受けられない場合とは?〜
フルミストは安全性の高いワクチンですが、生ワクチンであるため、一部の方には接種ができない場合があります。接種を検討される際には、以下の点を事前にご確認ください。
最も重要な注意点は、気管支喘息のお子さんへの接種についてです。特に喘息の症状が不安定な場合や、過去1年以内に喘息発作を起こしたことがあるお子さんは、フルミストの接種により喘息症状が悪化するリスクがあるため、接種を避ける必要があります。喘息の既往があるお子さんの場合は、接種前に必ず医師にご相談ください。
その他、免疫不全の状態にあるお子さん、長期的にステロイドなどの免疫抑制剤を使用しているお子さん、卵アレルギーが重度のお子さんなども、接種を避ける必要があります。また、現在発熱している場合や、過去にフルミストで重いアレルギー反応を起こしたことがある場合も接種できません。
当院では、接種前に必ず問診票にご記入いただき、医師が接種の可否を慎重に判断いたします。少しでもご不安な点がございましたら、遠慮なくご相談ください。お子さんの安全を最優先に考え、一人ひとりに最適なワクチン接種方法をご提案させていただきます。
接種後の注意事項〜予想される症状と対処法〜
フルミストは注射型ワクチンと比べて痛みがない分、接種後の反応も軽度であることが多いですが、いくつかの症状が現れることがあります。これらは免疫が正常に働いている証拠でもあり、通常は数日以内に自然に改善しますので、過度にご心配される必要はありません。
最も多く見られる症状は、鼻水や鼻づまり、喉の痛みといった風邪に似た症状です。これは、鼻の粘膜に直接ワクチンを投与するため、局所的な免疫反応として現れるものです。約2割から3割のお子さんに見られますが、ほとんどの場合、2日から3日程度で自然に治まります。
その他、軽度の発熱、頭痛、倦怠感、食欲低下などが見られることもあります。これらの症状も通常は軽度で、市販の解熱鎮痛剤で対処できる程度です。ただし、38度以上の高熱が続く場合や、呼吸困難、ひどい咳、喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。
また、フルミストは生ワクチンであるため、接種後約1週間は、免疫不全の方との密接な接触を避けることが推奨されています。ご家族に免疫不全の方がいらっしゃる場合は、事前に医師にご相談ください。
当院でのフルミスト接種について〜予約方法と費用〜
うめもとクリニックでは、2024年シーズンからフルミストの接種を開始しております。注射を怖がるお子さんやご家族の負担を少しでも軽減したいという思いから、この新しいワクチンを導入いたしました。
接種対象は2歳から18歳までのお子さんです。接種をご希望の方は、事前にお電話でのご予約をお願いいたします。当日は問診票にご記入いただき、医師が接種の可否を判断した上で接種を行います。接種自体は数秒で終わり、お子さんの負担も最小限です。
費用は1回7,700円(税込)となります。フルミストは任意接種のワクチンのため、公費補助の対象外となり、全額自己負担となります。ただし、注射型の従来のインフルエンザワクチンと比べて、お子さんの精神的負担や、接種時の介助にかかる保護者の負担を考えると、十分にメリットのある選択肢と考えております。
現在、当院ではフルミストの在庫を確保しておりますが、数に限りがあり、なくなり次第終了となります。接種をご希望の方はお早めにご予約ください。
まとめ〜お子さんに優しいインフルエンザ予防を〜
フルミストは、注射が苦手なお子さんにとって、インフルエンザ予防の新しい選択肢となります。鼻にスプレーするだけで接種でき、効果も従来のワクチンと同等以上という、画期的なワクチンです。
「毎年注射で泣いてしまう」「発達障害があって注射が難しい」といったお悩みをお持ちのご家族は、ぜひフルミストをご検討ください。お子さんとご家族の健康を守るため、一緒に予防に取り組んでいきましょう。ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお電話ください。スタッフ一同、皆さまのご来院をお待ちしております。
引用文献
- 厚生労働省. インフルエンザワクチンについて. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html
- Belshe RB, et al. Live attenuated versus inactivated influenza vaccine in infants and young children. New England Journal of Medicine. 2007;356(7):685-696
- Block SL, et al. Comparative effectiveness of live attenuated and inactivated influenza vaccines. Pediatrics. 2008;122(6):e1340-e1347
- 日本小児科学会. インフルエンザワクチンに関する提言. 2024年版
- Carter NJ, Curran MP. Live attenuated influenza vaccine (FluMist®; Fluenz™): a review of its use in the prevention of seasonal influenza in children and adults. Drugs. 2011;71(12):1591-1622
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