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【院長ブログ】急な冷え込みに注意!ヒートショック対策と冬の血圧管理

[2025.11.30]

朝晩の冷え込みが感じられる季節となりました。最近、クリニックでは「お風呂に入るのが怖い」「血圧が急に上がって心配」といったご相談が増えております。2025年の冬は、暖かかった秋から一転して急激に寒くなる予報が出ており、例年以上に血管への負担が大きくなることが懸念されています。

特にラニーニャ現象に近い大気の状態により、12月には早くも真冬並みの寒気が南下する見通しです。この急激な温度変化が、ヒートショックによる脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。ヒートショック対策について詳しく解説いたします。

ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や脳に深刻なダメージを与える現象です。暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動すると、寒さを感じた体は熱の放散を防ぐため、交感神経を活性化させて血管を収縮させます。この寒冷昇圧反応により血圧が急上昇し、その後、熱いお湯に浸かることで今度は血管が拡張し血圧が急降下します。

この血圧の"ジェットコースター"のような変化が、心臓や脳の血流を乱し、失神や心筋梗塞、脳卒中を引き起こすリスクをあげます。

東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、1年間に全国で約1万7千人もの方がヒートショックに関連した入浴中急死に至ったと推計されています。これは交通事故による死亡者数の3倍をはるかに超える数字であり、そのうち高齢者が約8割を占めています。

厚生労働省人口動態統計(令和5年)によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は6,541人で、交通事故死亡者数2,116人のおよそ3倍に達しました。

ヒートショックによる脳卒中は、血圧の急激な変動が脳血管に過度の負担をかけ、脳出血や脳梗塞を引き起こすメカニズムで発生します。特に動脈硬化が進んでいる方や高血圧の方では、血管への負担がさらに大きくなります。

 

2025年冬のラニーニャ現象と寒さの影響

気象庁の予報では、2025年から2026年の冬は「ラニーニャ現象に近い状態」が続き、特に冬の前半にその特徴が現れやすくなる見通しです。12月には真冬並みの寒気が早い段階で南下し、日本海側を中心に局地的な大雪も予想されています。

この急激な寒さの到来が問題なのは、体が寒さに順応する前に厳しい冷え込みに晒されることです。通常、人間の体は徐々に気温が下がることで血管や自律神経が冬の環境に適応していきますが、今年のように暖かい秋から急に真冬の寒さになると、体の適応が追いつかず、血圧の変動がより大きくなってしまいます。

松山市は瀬戸内海気候で一年を通して温暖な地域ですが、冬の朝晩は意外と底冷えします。気象庁のデータによると、12月の平均最低気温は4.8℃、1月は2.6℃まで下がります。氷点下まで下がることは稀ですが、この「温暖だからこその油断」が危険です。暖房の効いた室内との温度差が大きくなりやすく、まさにヒートショックが起こりやすい環境なのです。

 

ヒートショックのリスクチェック

ヒートショックは誰にでも起こりうる現象ですが、特に以下の方々はリスクが高まります。65歳以上の高齢者は、血管の柔軟性が低下し、血圧調節機能が衰えているため、温度差による血圧変動の影響を受けやすくなります。

高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある方は、既に血管にダメージが蓄積しており、急激な血圧変動が致命的な心筋梗塞や脳卒中を引き起こしやすい状態にあります。また、動脈硬化が進んでいる方は、血管の弾力性が失われているため、血圧の急上昇に血管が耐えられず脳卒中のリスクが高まります。

生活習慣の面では、42度以上の熱い湯を好む方、入浴時間が長い方(15分以上)、一番風呂に入ることが多い方は要注意です。最近の調査では、約4割の方が「ヒートショック予備軍」として危険な入浴法をしていることが明らかになっています。さらに、飲酒後の入浴や食後すぐの入浴も、血圧変動を増幅させる危険な習慣です。

住環境も重要な要因です。戸建て住宅で脱衣所に暖房がない方、浴室が北側や日当たりの悪い場所にある方は、居室との温度差が大きくなりがちです。過去5年間の救急統計では、入浴中の事故は12月が最も多く13.2%を占め、次いで2月が10.3%、1月が10.1%となっています。まさに今から本格的な寒さを迎える時期が最も危険なのです。

 

今日からできるヒートショック対策

ヒートショックは適切な対策で予防できます。以下の7つの実践法をご紹介します。

  1. ステップ1:脱衣所と浴室の暖房
    入浴前に脱衣所を小型ヒーターなどで20度以上に暖め、浴室も浴槽の蓋を開けたりシャワーで壁にお湯をかけたりして温めておきましょう。居室との温度差を5度以内に抑えることが理想的です。
  2. ステップ2:適切な湯温と入浴時間
    湯温は41度以下、入浴時間は10分以内を目安にしてください。42度以上の熱い湯は血圧を急激に変動させます。ぬるめのお湯でゆっくり温まるほうが、体への負担が少なく、温熱効果も持続します。
  3. ステップ3:一番風呂を避ける
    家族の後に入ると浴室全体が温まっており、温度差が小さくなります。
  4. ステップ4:入浴のタイミング
    夕食後1時間以上空けてから入浴すること、飲酒後や睡眠剤服用後の入浴は避けることを守りましょう。これらは血圧調節機能を低下させ、転倒や意識障害のリスクを高めます。
  5. ステップ5:家庭血圧測定の習慣化
    朝晩の家庭血圧測定を習慣化してください。冬は早朝高血圧が起こりやすく、起床後1~2時間は交感神経が急に働き血圧が上昇する時間帯です。自分の血圧パターンを知ることで、医師と相談しながら適切な治療調整ができます。
  6. ステップ6:適度な水分補給
    入浴前後にコップ1杯の水を飲むことで、血液の粘度が下がり、血栓形成のリスクが減少します。
  7. ステップ7:ゆっくり立ち上がる
    浴槽から急に立ち上がると、立ちくらみを起こして転倒する危険があります。手すりにつかまり、ゆっくりと立ち上がりましょう。

 

当院での取り組み

当院では、脳神経内科クリニックとして冬季の脳血管疾患予防に力を入れております。特に高血圧や動脈硬化のある患者さんに対しては、冬場は寒冷刺激による血圧上昇を考慮し、降圧薬の種類や量を調整することがあります。

また、脳卒中の前兆となる症状(一過性の手足のしびれ、ろれつが回らない、視野が欠けるなど)についても丁寧に説明し、早期受診の重要性をお伝えしています。

定期通院されている方は、この冬の時期に血圧手帳を持参いただき、家庭での血圧値を一緒に確認させてください。また、新たに血圧が高めの方、ご家族に高齢者がいらっしゃる方も、お気軽にご相談いただければと思います。

 

まとめ

これから本格的な冬を迎えますが、正しい知識と対策で、ヒートショックは十分に予防できます。気になる症状や血圧のことで心配がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に安全で健康な冬を過ごしていきましょう。

 

引用文献
  1. 気象庁エルニーニョ監視速報「2025-26年冬の見通し」
  2. 日本気象協会「2025年冬の気象予報とラニーニャ現象」
  3. 厚生労働省人口動態統計(令和5年)「浴槽内での不慮の溺死及び溺水」
  4. 東京都健康長寿医療センター研究所「ヒートショックに関連した入浴中急死の推計」
  5. 気象庁「松山市の気候データ」
  6. 日本高血圧学会「早朝高血圧徹底制圧プロジェクト」
  7. 各地消防本部「入浴中の事故による救急搬送統計」
  8. 日本循環器学会「冬季の血圧管理と心血管イベント予防」
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