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【院長ブログ】感染性胃腸炎と実は夏より多い3月の食中毒

[2026.03.29]

松山城の桜もいよいよ見頃を迎え、春らしい穏やかな陽気が続くようになりました。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。さて、先日診察室で、ある患者さんから「食中毒って夏じゃないの?」というお声をいただきました。確かに「食中毒=夏」というイメージをお持ちの方は多いかもしれませんが、実は3月は1年の中でも特に食中毒のリスクが高い時期なのです。また現在、愛媛県では1月から続くノロウイルス食中毒注意報が依然として発令されています。楽しい行楽シーズンを台無しにしないためにも、今知っておくべきリスクと対策についてお話しします。

3月は食中毒のビッグ3が揃う警戒すべき時期

「3月はまだ涼しいから大丈夫」という油断は禁物です。厚生労働省の統計データを見ると、例年3月の食中毒発生件数は10月に次いで2番目に多く、なんと7月や8月の真夏よりも多いという事実があります。なぜ3月にこれほど増えるのでしょうか。それは、食中毒の原因となる食中毒のビッグ3がこの時期に一斉に揃ってしまうからです。

原因の種類 特徴と傾向
ウイルス性(ノロウイルスなど) 冬がピークですが、3月も活動が活発です。
寄生虫(アニサキス) 年間を通じて発生しますが、春は特に報告件数が増えます。
細菌性(カンピロバクターなど) 気温の上昇とともに、細菌も増え始めます。

さらに春先は、山菜の誤食による「自然毒」のリスクも加わります。春(3〜5月)の食中毒原因ランキングを見ると、アニサキスノロウイルスカンピロバクターが上位を占めています。気温の上昇という細菌に好都合な条件と、お花見や歓送迎会による人流の増加、そして私たちの油断が重なる3月こそ、最も注意が必要です。

愛媛県内で増加する感染性胃腸炎とノロウイルスの特徴

私たちの住む愛媛県でも、警戒が必要な状況が続いています。愛媛県の感染症発生動向調査によると、第11週(3月中旬)の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加傾向にあります。特に松山市保健所管内では9.17人と高い水準です。直近でも、砥部町や今治市の飲食店で集団食中毒事例が報告されています。

ノロウイルスは感染力が非常に強く、ごく少量のウイルスが口に入るだけで感染します。主な症状は激しい嘔吐、水様性の下痢、発熱です。重要なのは、アルコール消毒が効きにくいという点です。手洗いは必ず石けんと流水で行い、ドアノブやトイレは次亜塩素酸ナトリウムで消毒する必要があります。

鮮魚を楽しむ際の落とし穴 アニサキス食中毒を防ぐ

この時期は特にアニサキスへの注意が必要です。アニサキスはサバ、アジ、カツオ、イカなどに寄生する白い糸状の寄生虫です。生きたまま食べてしまうと、胃壁などに突き刺さり、激しいみぞおちの痛みや吐き気を引き起こします。

よくある誤解ですが、新鮮だから安全ではありません。むしろ新鮮な魚ほど、身へ移動する前の元気なアニサキスがいる可能性があります。

対策方法 具体的な内容
加熱する 60℃で1分以上加熱すれば死滅します。
冷凍する -20℃で24時間以上冷凍することで死滅します。
目視確認 調理の際は明るい場所で、目視確認を徹底しましょう。

もし、生魚を食べた後に激しい腹痛に襲われた場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。内視鏡で虫体を摘出すれば、痛みは速やかに治まります。

高齢者や持病のある方が特に注意すべき理由

食中毒や胃腸炎は、高齢者や持病のある方の場合は命に関わることもあります。高齢の方はもともと体内の水分量が少なく、短時間で重篤な脱水状態に陥りやすいのが特徴です。

認知症の方への注意点

症状を言葉でうまく伝えられないことがあります。いつもより元気がないといった変化を見逃さないでください。また、脱水が進むとせん妄(急性の意識障害)を起こしやすく、急に暴れたりつじつまの合わないことを言ったりすることがあります。

パーキンソン病の方への注意点

嚥下障害がある場合、嘔吐のリスクが高まると同時に水分補給も困難になります。また、嘔吐や下痢で薬が吸収されなくなると、運動症状が急激に悪化する恐れがあります。数日の寝たきり状態がフレイル(虚弱)の進行につながることも懸念されます。

家庭でできる予防と発症時の正しい対処法

  1. 予防の基本を徹底する
    やはり手洗いが最強の防御策です。石けんを使い流水で30秒以上洗いましょう。また、食品は中心部まで十分に加熱し、調理器具の消毒も忘れずに行ってください。
  2. 症状が出た際の適切な行動
    もし嘔吐や下痢が始まったら、脱水を防ぐことを最優先してください。経口補水液を少量ずつこまめに摂取しましょう。下痢止めを自己判断で飲むのは避けてください。
  3. 行楽シーズンの特別な対策
    お弁当はしっかり冷ましてから蓋をしましょう。また、意外な落とし穴がスマホです。トイレで使用したスマホを触った手で食事をするのは非常にリスクが高いため注意が必要です。

医療機関を受診する際の目安

以下の症状がある場合は、早めに受診してください。特に高齢の方や持病のある方は、早めの相談が重症化を防ぎます。

  • 水分が全く摂れない、または飲んでもすぐ吐いてしまう
  • 下痢や嘔吐が24時間以上続いている
  • 尿が半日以上出ていない(強い脱水のサイン)
  • ぐったりしている、または呼びかけへの反応が鈍い
  • 38.5℃以上の高熱や血便がある
  • 生魚を食べた後に激しい腹痛がある

まとめ

3月の食中毒リスクを正しく理解し、手洗いや加熱といった基本を徹底すれば、多くのリスクは防げます。美しい桜や美味しい食事を心から楽しむために、ぜひご家族で食の安全について話し合ってみてください。もし、ご家族の体調や、認知症パーキンソン病のケアで不安なことがあれば、いつでも当院にご相談ください。

 

引用文献

  1. 厚生労働省「食中毒統計資料」2024年
  2. 愛媛県保健福祉部「感染症発生動向調査 週報(2024年第11週)」
  3. 愛媛県「ノロウイルス食中毒注意報発令(2024年1月16日)」
  4. 食品安全委員会「アニサキスによる食中毒について」2022年
  5. 日本神経学会「認知症診療ガイドライン2023」
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