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【院長ブログ】新型コロナ「セミ型(BA.3.2)」とは?子どもへの広がりと松山市の流行状況

[2026.06.28]

梅雨の蒸し暑さが続くこの時期、発熱外来では「子どもが熱を出して、コロナだったんです」というお話を伺うことが増えてきました。松山市を含む愛媛県では、6月に入ってから新型コロナの患者さんがじわじわと増えています。あわせて、セミ型と呼ばれる聞き慣れない変異株の名前を、ニュースやSNSで目にされた方も多いのではないでしょうか。

この記事では、いまのクリニック周辺の流行状況、新しい変異株はどんなものなのか、そして特に気になる子どもへの広がりの報告について、わかっている範囲を整理してお伝えします。

松山市・東温市でも増加中 ―― 2026年夏の新型コロナウイルス

まず、地元の数字から見ていきます。愛媛県が公表している定点報告(決められた医療機関あたりの平均患者数)では、6月8日から14日の週に県全体で2.58となりました。その2週間前は0.55でしたから、短い期間でおよそ4〜5倍に増えた計算になります。松山市の保健所管内でも2.50と、同じように立ち上がりが見られます。

ただ、ここで慌てる必要はありません。愛媛県が注意報の目安としている数値は10人以上、警報は30人以上です。現時点ではそこには達していません。増えてはいるものの、まだ大きな波になっているわけではない、というのが正確なところです。

新型コロナは2022年以降、日本では夏にも流行する傾向があります。冷房で窓を閉め切って換気が不足しやすいこと、お盆の帰省や行事で人が動くことなどが背景にあると考えられています。これから夏本番に向けて、ゆるやかに増える可能性は念頭に置いておくとよさそうです。

主役が交代しつつあります ―― ニンバスからセミ型

新型コロナのウイルスは、少しずつ姿を変えながら流行を繰り返しています。2026年の前半まで国内で多かったのは、ニンバスと呼ばれるNB.1.8.1という系統でした。この株は、これまでにないほど強い喉の痛みが特徴とされ、カミソリで切られたような痛みと表現されることもあります。喉の痛み以外は、発熱や咳など、ふつうの風邪と似た症状です。

そして最近、このニンバスに代わって増えてきているのが、今回の主役であるセミ型(BA.3.2)です。国の研究機関(JIHS)の集計では、2026年4月の段階でBA.3.2系統がおよそ半数を占め、ニンバス系統を上回ったと報告されています。

もっとも、この割合は検体数が比較的少ない月ごとの集計で、今後の追加報告で数字が動く可能性があります。ですのでセミ型にちょうど置き換わりが進んでいる時期と理解しておくのが実情に近いと思います。

セミ型という名前の由来と、その意外な性格

なぜセミなのか。これがなかなか興味深い話です。BA.3.2のもとになったBA.3という系統は、2022年初めにいったん世界中から姿を消していました。それが、免疫の働きが弱った一人の患者さんの体内で2年近く潜伏しながら変異を積み重ね、2024年11月に南アフリカでBA.3.2として再び現れた、と考えられています。長く地中に潜んで一斉に出てくるセミになぞらえて、研究者がCicada(セミ)という通称をつけました。なお、これはあくまで通称で、WHOやCDCの正式名称ではありません。WHOの分類では、最も注意度の低い監視下の変異株に位置づけられています。

この株には、二つの相反する性格があります。

  • 一つは、過去の感染やワクチンで得た免疫をかわしやすいこと。ワクチンが想定する型と比べ、ウイルス表面のとげ(スパイク)の70〜75か所に変化があるとされ、これは過去の大きな変異を上回る変化です。
  • もう一つの性格として、広がるスピードは意外なほど速くないという特徴があります。ウイルスが細胞に入り込む鍵となる結合力が弱まっているためと考えられ、実際にアメリカでの占有率はごくわずか(CDC報告で約0.19%)にとどまっています。欧州で一時3割ほどまで増えた地域もありましたが、入院や死亡が目立って増えることはなく、その後は落ち着いています。専門家の見方も主要な株になる可能性はあるが、大きな波を起こすタイプではなさそうだというものです。

症状と、いま注目されている子どもへの広がりの報告

気になる症状ですが、セミ型に特有の症状というものは、いまのところ確認されていません。

発熱や悪寒、喉の痛み、鼻水・鼻づまり、咳、頭痛、だるさや筋肉痛、吐き気や下痢といった、これまでのオミクロン株とおおむね同じです。味やにおいがわからなくなる症状は、以前より少なくなっています。インフルエンザやRSウイルスとの見分けは症状だけでは難しく、はっきりさせるには抗原検査やPCR検査が必要です。現時点で、重症化しやすくなったことを示す確かな証拠はありません。とはいえ重症化しにくい=無害ではない、という点は心に留めておきたいところです。

そのうえで、このセミ型で一つ注目されているのが、子どもに偏って広がっているという報告です。スペインのある州ではBA.3系統の感染者の約83%が18歳以下だった、ニューヨーク市では子どもの感染率が他の株のおよそ5倍だった、といった観察が出ています。理由として、子どもはこれまでの感染やワクチンの経験が大人より少なく、免疫の引き出しが少ないこと、学校や保育園という集団生活の環境などが推測されていますが、まだ仮説の段階です。

なお、ワクチンについては、セミ型に対する中和抗体の働きはやや下がるという実験室のデータがある一方、重症化を防ぐ効果は引き続き期待できると考えられています。飲み薬の治療薬も、変化の大きいスパイクとは別の部分を標的にするため、効果は保たれると考えられています。

 

どんなときに受診すればよいか ―― 大人とお子さんの目安

最後に、受診の目安を整理します。診断は診察と検査で行うものですので、以下はあくまで相談の目安とお考えください。

大人の方では、強い喉の痛み、発熱、強いだるさなどが続くときは、早めにご相談ください。特にご高齢の方や、持病のある方は重症化のリスクが相対的に高いため、流行期は人混みを避けるなどの工夫をおすすめします。

お子さんについては、次のような場合に受診をご検討ください。

  • 38.5℃以上の発熱が数日続いている
  • 呼吸が苦しそう、肩で息をしている
  • 水分が取れず、ぐったりしている
  • いったん良くなったのに、再び悪化した

日々の対策としては、石けんでの手洗い、人混みでのマスク、こまめな換気が引き続き有効です。夏は冷房で閉め切りになりがちですが、対角線上の2か所を開けると効率よく換気できます。体調が悪いときは、無理せず外出や登校・登園を控えることも、ご自身と周りを守ることにつながります。

うめもとクリニックでは発熱外来を設けており、お電話でのご予約を承っています。発熱や喉の痛みなどで受診をご希望の際は、来院前に一度お電話でご連絡いただけますと、スムーズにご案内できます。

まとめ

松山市でも新型コロナがゆるやかに増え、流行の主役がセミ型へと移りつつあります。免疫をかわしやすい一方で広がりは速くなく、症状もこれまでと大きくは変わりません。子どもへの広がりを示す報告はありますが、まだ確定したものではなく、必要以上に怖がる段階ではありません。手洗いや換気といった基本を続けながら、気になる症状があるときは早めにご相談いただければと思います。

引用文献・参考資料

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