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【院長ブログ】治る認知症?ハキム病とは~早期発見で健康寿命を延ばそう~

[2025.06.29]

皆さんは「ハキム病」という病気をご存知でしょうか。これまで「特発性正常圧水頭症」と呼ばれていた病気の新しい名称で、「治療できる認知症」として近年注目を集めています。今回は、この「ハキム病」について、お話しさせていただきます。

 

ハキム病とは?特発性正常圧水頭症の新しい名称

ハキム病とは、これまで「特発性正常圧水頭症」と呼ばれていた病気の名称です。「特発性正常圧水頭症」という名前は、医療従事者にとっても複雑で理解しにくく、一般の方々にはさらに馴染みのないものでした。「特発性」は原因不明という意味で、「正常圧」は頭の中の圧力が正常ということを表していますが、最近の研究により、必ずしも全ての患者さんで圧力が正常とは限らないことがわかってきました。そこで、2019年にスウェーデン、イギリス、日本の国際水頭症学会が中心となって研究グループを立ち上げ、4年半にわたる検討の結果、この病気を最初に発見した医師の名前を取って「ハキム病」と呼ぶことが提案されました。

ハキム病は、主に75歳前後の高齢者に発症することが多く、高齢者人口の約1%に潜むとされています。一見すると認知症のような症状が現れますが、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できる点が大きな特徴です。


ハキム病のメカニズム~なぜ高齢者に多いのか

私たちの脳では、毎日約400~500mlの脳脊髄液が新しく作られ、同じ量が血液中に吸収されています。健康な成人では約150mlの脳脊髄液が賛成され、1日に約3回入れ替わる計算になります。

ところが、年齢を重ねるにつれて、この脳脊髄液の入れ替わりが少なくなってきます。さらに、動脈硬化などの影響で脳脊髄液の吸収が悪くなると、脳を圧迫してさまざまな症状を引き起こします。

このような脳脊髄液の循環障害が、加齢とともに起こりやすくなるため、ハキム病は高齢者に多く見られる原因のひとつと考えられています。

 

見逃しやすい3つの主な症状

ハキム病には特徴的な3つの症状があります。これらは「3徴候」と呼ばれ、診断の重要な手がかりとなります。

歩行・バランス障害が最も多く、94~100%の患者さんに見られます。特徴的なのは、足を開いて小股でペタペタと歩く「すり足歩行」です。階段の上り下りが遅くなったり、ダンスができなくなったりといった軽い症状から始まることが多く、単に「年のせい」と見過ごされがちです。

認知障害では、物忘れや見当識障害といったアルツハイマー病のような症状に加えて、注意力の低下や意欲の減退といった前頭葉の機能障害が見られます。

排尿障害は、頻尿や尿失禁として現れ、過活動性膀胱の症状と似ています。トイレが近くなったり、間に合わずに失禁してしまったりすることがあります。

これらの症状は、すべてが同時に現れるわけではありません。軽度の歩行障害や認知障害から始まり、徐々に悪化していくことが多いため、早期の気づきが重要です。

 


早期発見のポイントと受診のタイミング

ハキム病の早期発見には、ご家族の観察が非常に重要です。以下のような変化に気づいたら、早めの受診をお勧めします。

歩き方の変化として、足を引きずるように歩く、歩幅が狭くなる、バランスを崩しやすくなる、階段の上り下りに時間がかかるようになるなどがあります。また、これまでできていた運動や趣味活動がしなくなった場合も要注意です。

認知機能の面では、物忘れが増える、日付や場所がわからなくなる、やる気がなくなる、集中力が続かなくなるといった変化が見られることがあります。

排尿に関しては、トイレが近くなる、夜中にトイレに起きる回数が増える、間に合わずに失禁することがあるといった症状に注意が必要です。

重要なのは、これらの症状が「年のせい」として片付けられやすいことです。しかし、ハキム病は治療可能な病気であるため、気になる症状があれば遠慮せずに医療機関を受診することをお勧めします。


ハキム病の治療法

現在、ハキム病の根本的な治療法は、シャント手術という外科的治療のみです。お薬での治療は症状を緩和する程度で、根本的な改善は期待できません。

シャント手術では、体内にシリコン製の細いチューブ(シャント)を植え込み、脳室に溜まった脳脊髄液を腹腔内に流して吸収させます。手術時間は約1時間程度で、比較的安全に行える手術です。

手術の効果は症状によって異なりますが、歩行障害に対しては58~90%と最も高い改善効果が期待できます。認知機能や排尿機能への効果は患者さんによってばらつきがありますが、多くの方で改善が見られます。

手術前には、腰から脳脊髄液を少量抜き取る検査(タップテスト)や、数日間持続的に脳脊髄液を排出する検査を行い、症状の改善を確認してから手術の適応を決定します。

症状が進行してから治療を受けても、完全に元の状態に戻ることは困難です。そのため、早期発見・早期治療が何より重要なのです。


まとめ

ハキム病は、これまで「特発性正常圧水頭症」と呼ばれていた病気の新しい名称で、「治療できる認知症」として注目されています。歩行障害、認知障害、排尿障害という3つの主な症状があり、高齢者に多く見られる病気です。気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。

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