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【院長ブログ】片頭痛をくり返してつらい方へ。新しい飲み薬「アクイプタ(アトゲパント)」でできる予防治療

[2026.07.19]

梅雨が明けて気圧の変化が続くこの時期、外来では「また片頭痛の回数が増えてきて」というご相談が増えます。診察室でお話を伺っていると、痛み止めを手放せないまま、なんとかやり過ごしている方が意外に多いと感じます。「発作が来るのが怖くて予定を立てられない」「薬の量が少しずつ増えている気がする」。そんな声を聞くと、痛みを止めるだけでなく、発作そのものを減らす方法をお伝えしたくなります。2026年に登場した新しい飲み薬アクイプタ(一般名アトゲパント)は、その選択肢のひとつです。この記事では、どんな薬なのか、どんな方が対象になり得るのか、費用や注意点まで、できるだけかみくだいてお伝えします。

アクイプタ(アトゲパント)の特徴と服用方法

アクイプタは、片頭痛の発作を起こりにくくするための予防薬です。ここが最初につまずきやすいところなのですが、痛くなったときに飲んで痛みを止める薬ではありません。頭痛のない日も、原則として毎日1回飲み続けることで、発作の回数を減らしていく薬です。

通常は、成人の方でアトゲパントとして60mgを1日1回内服します。2026年2月に国内で承認され、同年4月から使えるようになった、比較的新しいお薬です。

もし服用中に片頭痛の発作が起きた場合は、アクイプタを追加で飲むのではなく、別に痛み止め(急性期治療薬)で対応します。予防と発作時の対処は役割が分かれていると考えていただくとわかりやすいかもしれません。

片頭痛には、CGRPという体内の物質が深く関わっていることがわかってきました。発作のとき、神経からこのCGRPが放出され、痛みの経路が活発になると考えられています。アクイプタは、そのCGRPが受け皿(受容体)にくっつくのをブロックすることで、痛みが広がる流れを抑えます。鎮痛薬とはまったく違う仕組みで働く薬だ、とイメージしていただければと思います。

片頭痛の予防治療が必要な方の目安

予防治療を考えるひとつの目安として、片頭痛が月に4日以上あるという基準がよく紹介されます。ただ、これは一律の処方条件ではありません。大切なのは、頭痛の日数だけでなく、その痛みが生活にどれくらい支障を与えているかです。外来でお話を伺っていると、月に2〜3日でも、そのたびに寝込んでしまうという方は少なくありません。発作への不安で予定が立てられない、痛み止めが効きにくくなってきた、使う回数が増えてきた。こうした状況も、予防治療を検討するきっかけになります。

片頭痛は我慢の量で評価する病気ではありません。生活に影響があると感じるなら、予防という選択肢を一度考えてみる価値があります。

一方で、注意して判断すべき方もいます。次に該当する方は、慎重な検討が必要です。ご自身が対象になるかどうかは、診察のなかで一緒に確認していきましょう。

  • 妊娠中や妊娠を希望されている方
  • 授乳中の方
  • 重い腎臓や肝臓の病気がある方
  • 飲み合わせに配慮が必要な薬を使っている方

期待できる治療効果と知っておきたい副作用

日本人の片頭痛患者さんを対象にした試験では、アクイプタ60mgを12週間続けたところ、月の片頭痛日数が平均3.34日減少しました。偽薬(プラセボ)を飲んだ群でも1.24日減っていたので、薬による上乗せ分はおよそ2.1日ということになります。

これはあくまで参加者全体の平均で、効果には個人差があります。全員の片頭痛がなくなるわけではありませんが、数値以上に痛みが軽くなったといった変化を実感される方もいます。効果は頭痛の日数だけでなく、生活への支障や急性期薬の使用日数も含めて見ていきます。

飲み始めてから3か月ほどを目安に、効いているかどうかを一緒に評価します。手ごたえがあれば継続し、その後も定期的に見直します。しっかり良くなって生活に支障がなくなれば、中止を考えることもあります。

主な副作用としては、便秘が約1割、吐き気が約3%の方に報告されています。そのほか、食欲の低下、体重減少、だるさ、眠気、肝機能の数値の変動などがあり、まれに発疹やかゆみといった過敏症反応が出ることもあります。過敏症は飲んだ直後だけでなく、数日たってから現れることもあるので、気になる症状があれば早めにご相談ください。

なお、いま飲んでいる薬やサプリメントとの飲み合わせで、量の調整が必要になる場合があります。受診の際は、お薬手帳をあわせてお持ちください。

薬剤の使用過多による頭痛(MOH)とアクイプタ

外来で気がかりなのは、痛み止めを使う日が増えて、かえって頭痛が慢性化してしまう薬剤の使用過多による頭痛(MOH)と呼ばれる状態です。もともと片頭痛のある方が急性期治療薬を使いすぎることで、頭痛が増える悪順に入ってしまいます。

目安としては、以下の条件に当てはまる場合に疑われます。

薬の種類 使用頻度の目安
市販薬などの単純な鎮痛薬 月に15日以上
トリプタンや複合鎮痛薬 月に10日以上
全体の頭痛日数 月に15日以上が3か月継続

こうした慢性片頭痛の方でも、アクイプタの有効性が報告されています。海外試験では、痛み止めを使いすぎていたグループにおいて、アクイプタ60mg群は偽薬と比べて急性期薬を使う日数が2.6日多く減少していました。

アクイプタは、もとになる片頭痛の発作を減らすことで、痛み止めを必要とする日が減り、結果として悪循環から抜け出しやすくなるという位置づけです。予防薬とあわせて、頭痛ダイアリーによる記録や痛み止めの使い方の見直しを組み合わせていくことが大切です。

他の予防薬との違いと治療の選び方

片頭痛の予防薬には、アクイプタのほかにもいくつか選択肢があります。従来からある内服薬(ロメリジンやプロプラノロール等)は、使用経験が長く、費用を抑えやすいのが利点です。一方で、眠気やふらつきなどが出ることもあります。

同じ仲間の飲み薬にナルティーク(リメゲパント)があり、こちらは発作時の治療と予防の両方に使えるという特徴があります。また、月1回程度の注射で予防するCGRP関連の注射薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど)もあり、毎日の服薬が苦手な方に向いています。

大事なのは、これらに単純な優劣があるわけではないということです。毎日きちんと飲める方、注射に抵抗がある方にはアクイプタが合いやすい一方、飲み忘れが心配な方には注射薬が向くこともあります。生活スタイルや費用の感じ方まで含めて、一緒に選んでいきましょう。

まとめ

アクイプタは、片頭痛の発作を減らすための1日1回の飲み薬で、痛みを我慢し続けてきた方にとって新しい選択肢になり得ます。ただ、すべての方に最適というわけではなく、従来薬や注射薬とそれぞれ持ち味が違います。うめもとクリニックでは、頭痛の背景を丁寧に確認し、生活への影響もお聞きしながら、どの治療が合うかを一緒に整えていきます。ひとりで抱え込まず、まずは一度お話を聞かせてください。

参考文献・資料

  1. 医薬品医療機器総合機構(PMDA). アクイプタ錠10mg・30mg・60mg 電子添文. 2026年2月作成(第1版). ↗
  2. 日本頭痛学会. CGRP受容体拮抗薬アトゲパントを片頭痛治療においてどのように使用するか. CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン. ↗
  3. Goadsby PJ, et al. Efficacy of Atogepant in Chronic Migraine With and Without Acute Medication Overuse in the Randomized, Double-Blind, Phase 3 PROGRESS Trial. Neurology. 2024;103(2):e209584.[PubMed ↗] [全文 ↗]
  4. 日本頭痛学会. CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版). ↗
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