【院長ブログ】男性にも9価HPVワクチンが了承!男性が知るべきポイントを解説
皆さまこんにちは。2025年7月24日に開催された厚生労働省の薬事審議会において、9価HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの男性への適応拡大が了承されました。これまで男性には4価HPVワクチンのみが使用可能でしたが、今回の決定により、より幅広い型をカバーする9価ワクチンも選択できるようになります。
当院では、これまでにも男性の患者さんにも4価HPVワクチンの接種を実施しており、10代前半から20代の幅広い年齢層の方々にご利用いただいています。今回の9価ワクチンの適応拡大により、さらに効果的なHPV予防の選択肢が拡大することを大変嬉しく思っております。
男性HPVワクチン了承で何が変わったか?
これまで男性に使用できるHPVワクチンは、4価HPVワクチン(ガーダシル)のみでした。4価ワクチンは、HPV6型、11型、16型、18型の4つの型を予防対象としており、主に肛門がんと尖圭コンジローマ(性器にできる良性のいぼ)の予防を目的として承認されていました。
今回了承された9価HPVワクチン(シルガード9)は、従来の4つの型に加えて、31型、33型、45型、52型、58型の5つの型も予防対象に含まれます。これらの追加された型は、特にアジア系の人種で子宮頸がんや中咽頭がんの原因となることが多いHPV型であり、日本人男性にとってより効果的な予防が期待できます。
さらに重要なのは、正式に承認されることで、万が一健康被害が生じた場合の救済制度の対象となることです。これは患者さんの安全性を確保する上で非常に重要な変更点です。現在も4価ワクチンは承認薬として救済対象でしたが、9価ワクチンについても同様の保障が受けられるようになります。
男性が知っておくべきHPV関連疾患の現状
多くの方がHPVを「女性の問題」と考えがちですが、実際には男性も様々なHPV関連疾患のリスクを抱えています。重要な疾患について詳しくご説明いたします。
中咽頭がんは、日本では年間約4,000人弱の男性が中咽頭部周辺のがんに罹患しており、その約半数にHPVが関与しています。特に、HPV16型が中咽頭がん症例の約90%を占めており、従来の喫煙や飲酒とは異なる原因で発症するがんとして注目されています。この疾患は従来の検診制度では発見が困難で、症状が進行してから発見されることが多いのが特徴です。
肛門がんについては、年間約500~1000人程度が罹患しており、男女ほぼ同数で発症します。肛門がんは、定期的な検診制度が確立されていないため、予防接種による一次予防が特に重要となります。HPV16型と18型が主な原因となっており、9価ワクチンに含まれる追加の型も予防効果に寄与します。
尖圭コンジローマは良性疾患ですが、外性器や肛門周囲にいぼ状の病変ができ、再発率が非常に高いことが問題となります。治療には外科的切除やレーザー治療が必要で、患者さんの生活の質に大きく影響します。HPV6型と11型が主な原因で、4価・9価両ワクチンで予防可能です。
接種対象と接種スケジュール
9価HPVワクチンの接種対象は9歳以上の男性となります。接種回数と間隔については、開始年齢によって異なるスケジュールが設定されています。
15歳未満で接種を開始する場合は、2回接種が可能です。初回接種の後、5-12か月の間隔をあけて2回目を接種します。この年齢では免疫反応が良好なため、2回接種でも十分な効果が期待できます。
15歳以降で接種を開始する場合は、3回接種が必要です。初回接種の2か月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目を接種する「0-2-6か月スケジュール」が標準的です。
男性への接種は自費診療となっており、費用は医療機関によって異なります。
世界標準への道のりと今後の展望
今回の9価ワクチンの男性への適応拡大により、日本は世界標準により近づいたと言えます。既に世界90か国以上で9価HPVワクチンの男性への使用が承認されており、多くの国で男女問わずHPVワクチン接種が推奨されています。
オーストラリアやイギリスなどの先進国では、すでに男性も定期接種の対象となっており、高い接種率を達成しています。これらの国々では、HPV関連疾患の発症率が大幅に減少しており、ワクチン接種の効果が実証されています。
日本においても、今回の適応拡大を機に、男性の定期接種化に向けた議論が加速することを期待しています。HPVは性別に関係なく感染し、男女ともに重篤な疾患の原因となるウイルスです。女性のみならず男性も予防接種を受けることで、社会全体でのHPV関連疾患の撲滅に近づくことができます。
まとめ
HPVは男女共通の健康問題であり、性別に関係なく適切な予防策を講じることが重要です。特に若い年齢での接種ほど高い予防効果が期待できるため、早期接種をお勧めします。しかし、年齢を重ねた方でも一定の効果は期待できますので、関心をお持ちの方はぜひご相談ください。
HPVワクチンに関するご質問やご相談がございましたら、まずはお気軽に当院までお問い合わせください。正しい知識を持って、ご自身とパートナーの健康を守るための第一歩を踏み出していただければと思います。
参考文献
1. Chow EPF, et al. Cost-effectiveness analysis of HPV vaccination for the prevention of oropharyngeal cancer among males: A systematic review. Infectious Agents and Cancer. 2025;20:42.
2. Johnson KL, et al. Projected Association of Human Papillomavirus Vaccination With Oropharyngeal Cancer Incidence in the US, 2020-2045. JAMA Oncology. 2021;7(10):e212907.
3. 厚生労働省. ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート追補版. 2025年3月.
