メニュー

【院長ブログ】男性140・女性160が分岐点! 今日からできるコレステロール対策

[2026.02.22]

立春を過ぎ、梅のつぼみもほころび始める季節となりました。さて、2月は日本生活習慣病予防協会が主催する「全国生活習慣病予防月間」です。前回のブログでは「高血圧」についてお話ししましたが、今回はその第2弾として脂質異常症(高コレステロール血症)について取り上げたいと思います。

健康診断の結果を見て、「うちは家系的にコレステロールが高いから仕方ない」と諦めている方はいらしゃいませんか。確かに、体質遺伝はコレステロール値に影響を与えます。しかし、それだけで全てが決まってしまうわけではありません。今回は、前回と同じく疫学という科学的なエビデンスに基づいて、コレステロールの正体やリスク、そして具体的な改善策について解説したいと思います。

コレステロールとは?LDLとHDLの基礎知識

コレステロールと聞くと「悪いもの」というイメージがありますが、実は細胞膜やホルモンの材料として欠かせない物質です。問題は、多すぎることなんですね。

健康診断で注目すべきはLDLコレステロール(悪玉)HDLコレステロール(善玉)です。LDLは肝臓から全身へコレステロールを運びますが、増えすぎると血管壁に蓄積して動脈硬化を引き起こします。一方、HDLは余分なコレステロールを回収する「血管のお掃除役」です。

最近ではnon-HDLコレステロール(総コレステロール−HDL)も重要視されています。これは「動脈硬化を引き起こす悪玉の総量」を表し、より包括的なリスク評価ができる指標です。

CIRCS研究が示すLDL値と心筋梗塞リスク

では、コレステロールが高いと、具体的にどのくらい病気のリスクが上がるのでしょうか? ここでも重要になるのが、前回の高血圧のお話でもご紹介したCIRCS(サークス)研究です。1960年代から60年以上にわたり、地域住民の健康状態を追跡調査してきた、世界に誇る日本のエビデンスです。

LDL値と心筋梗塞リスクの関係

CIRCS研究によって、LDLコレステロール値は80mg/dL付近を底にして、高くなればなるほど心筋梗塞のリスクが直線的に上昇することが判明しました。具体的には、LDL値が140mg/dL以上になると、心筋梗塞のリスクは約3.8倍にも跳ね上がります。「少々高くても症状がないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、血管の中では静かに動脈硬化が進行しているのです。

LDL値の重要ポイント:男性140mg/dL・女性160mg/dL

男性の場合、LDL値が140mg/dLを超えると心筋梗塞リスクが急上昇します。女性は女性ホルモンの保護作用で160mg/dLまでは比較的リスクが低めですが、閉経後はホルモンが減少するため油断は禁物です。更年期以降の女性は、男性と同様に厳格な管理が必要になります。

日本人のコレステロール値上昇の背景

コレステロール値の変化:終戦直後160mg/dLから現在200mg/dL超へ

CIRCS研究が開始された1960年代、日本人の総コレステロール値は平均156〜175mg/dL程度でした。それが現在では200mg/dLを超えるまで上昇しています。この変化は、わずか2〜3世代で起こりました。人間の遺伝子がこれほど短期間で変化することはあり得ません。つまり、主原因は生活習慣の変化なのです。

コレステロール値上昇の主な要因

最大の要因は食生活の欧米化です。肉類、乳製品、油脂の摂取増加により、動脈硬化を促進する飽和脂肪酸の摂取量が大幅に増えました。逆に言えば、「生活習慣で上がったのなら、生活習慣で下げられる」ということになります。「遺伝だから」と諦める前に、まずはご自身の生活習慣を見直す価値が十分にあるのです。

コレステロールに関する疑問Q&A

診察室で患者さんからよくいただく疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. 卵は1日1個までと聞きますが、本当ですか?

かつてはコレステロール摂取制限がありましたが、現在の基準では、食事から摂るコレステロール量と血中のコレステロール値の直接的な関係は以前考えられていたほど強くないことがわかっています。そのため、健康な人であれば厳密な個数制限はありません。

ただし、既にLDLコレステロール値が高い人にとっては、やはり食品からのコレステロール摂取が数値を上げる要因になります。高コレステロール血症の方は、卵は1日1個未満、できれば週に2〜3個程度に控えることをお勧めします。

Q2. 痩せているのにコレステロールが高いのはなぜですか?

「太っている=コレステロールが高い」と思われがちですが、痩せている方でも数値が高いことは珍しくありません。これは「家族性高コレステロール血症」などの遺伝的素因が強い場合や、閉経後の女性ホルモンの減少、あるいは甲状腺の機能低下などが隠れている場合があります。

痩せているからといって動脈硬化が進まないわけではありません。体型に関わらず、数値が高い場合はしっかりと対策が必要です。

Q3. サプリメント(EPA/DHAなど)で下がりますか?

青魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸は、中性脂肪を下げる効果が認められており、医薬品としても使われています。しかし、LDLコレステロールを直接強力に下げる効果は限定的です。

サプリメントはあくまで補助的なものです。まずは食事内容の見直しと運動、そして必要な場合は医師が処方する薬による治療を優先してください。

Q4. 薬を飲み始めたら、一生やめられないのですか?

高血圧の薬と同様、必ずしも一生とは限りません。食事や運動などの生活習慣を劇的に改善し、数値が安定して下がれば、薬を減らしたり中止したりできるケースもあります。

ただし、コレステロールは自覚症状がないため、自己判断でやめてしまうのが一番危険です。血管を守るためには「良い数値を維持し続けること」が何より大切ですので、主治医と相談しながら治療計画を立てていきましょう。

Q5. 女性ですが、コレステロールが高くても長生きできると聞きました。

一部でそのような説が流布されていますが、エビデンスに基づくと注意が必要です。確かに高齢の女性では、コレステロールが多少高めの方が栄養状態が良いことを反映している場合があります。

しかし、LDLコレステロールが高い状態が長く続けば、確実に動脈硬化は進行します。特に、糖尿病や高血圧など他のリスクをお持ちの方や、実際に動脈硬化が進んでいる方は、しっかりと数値を下げることで心筋梗塞や脳卒中の予防効果があることが証明されています。

コレステロール値を下げるための具体的な方法

食生活改善:5〜10%の改善効果

食事療法の基本は、「減らすもの」「増やすもの」を意識することです。

  • 減らす:飽和脂肪酸
    肉の脂身、バター、生クリーム、洋菓子など。これらを控えるだけでLDL値は変わり始めます。
  • 増やす:食物繊維
    野菜、海藻、きのこ、大豆製品。余分なコレステロールを排出してくれます。
  • 置き換える:青魚
    サバ、イワシ、サンマなどの青魚の油(不飽和脂肪酸)は血液をサラサラにします。

有酸素運動:善玉コレステロールを増やす

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、HDL(善玉)を増やす効果があります。1日30分以上、週3回以上が理想です。「ニコニコおしゃべりができる程度」の強さで、継続することが大切です。

薬物療法:LDL 180mg/dL以上なら検討を

生活習慣改善でも目標値に届かない場合、特にLDL値が180mg/dLを超える場合や、糖尿病・高血圧を合併している場合は、薬物療法が推奨されます。「スタチン」という薬はLDL値を強力に下げ、心筋梗塞や脳卒中を大幅に減らすことが証明されています。血管が詰まってからでは遅いのです。かかりつけ医とよく相談し、最適な治療を選択してください。

まとめ:コレステロール値を改善し健康寿命を延ばしましょう

コレステロール値の上昇は、時代の変化とともに私たち日本人が直面した新たな課題です。「遺伝だから」と諦めてしまうのは、あまりにも勿体無いことです。食事を少し見直す、少し歩く時間を増やす、そして必要ならば医療の力を借りる。その一つ一つの選択が、あなたの血管を守り、10年後、20年後の元気な姿へとつながっています。包括的なリスク管理で、心筋梗塞や脳梗塞を予防しましょう。

当院では、皆様一人ひとりのライフスタイルに合わせた無理のないコレステロール管理をサポートしています。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

参考文献

  • Imano H, Noda H, Kitamura A, et al. Low-density lipoprotein cholesterol and risk of coronary heart disease among Japanese men and women: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). Prev Med. 2011;52(5):381-386.
  • Imano H, Iso H, Kiyama M, et al. Association between non-high-density lipoprotein cholesterol levels and the incidence of coronary heart disease among Japanese: The Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS). J Atheroscler Thromb. 2011;18(6):454-463.
  • 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 東京: 日本動脈硬化学会; 2022.
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME