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【院長ブログ】脂肪肝の真実~脂肪の摂りすぎが原因ではありません~

[2025.10.12]

朝夕の冷え込みが感じられる季節となりました。最近、患者さんやご家族から「健康診断で脂肪肝と言われたのですが、脂肪を控えれば治りますか」「お肉を食べ過ぎたのでしょうか」といったご質問を多くいただいております。

実は、脂肪肝の最大の原因は「脂肪の摂りすぎ」ではありません。今回は、脂肪肝の真実について、最新の医学的知見をもとに分かりやすく解説いたします。

脂肪肝の新しい分類「MASLD」について

2024年8月、日本肝臓学会と日本消化器病学会により、脂肪肝の病名が大きく変更されました。これまで「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド)」と呼ばれていた疾患が、新たに「MASLD(マッスルディー):代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」という名称に変更されています。

この変更の背景には、脂肪肝が単に「アルコールを飲まない人の脂肪肝」という消極的な定義ではなく、糖尿病、肥満、高血圧などの代謝異常と深く関わる疾患であることが明らかになったためです。MASLDという新しい名称は、この疾患の本質をより正確に表現しており、私たち医療従事者にとっても、患者さんにとっても、より理解しやすい分類となっています。

 

脂肪肝の本当の原因は「糖質の摂りすぎ」

多くの方が誤解されているのですが、脂肪肝の主な原因は脂肪の摂取ではなく、糖質(炭水化物)の過剰摂取にあります。特に問題となるのは、清涼飲料水や菓子類に含まれる「果糖」です。果糖は肝臓で直接脂肪に変換される性質があり、脂肪肝の発症に直結します。

名古屋大学の研究によると、砂糖の過剰摂取により腸内細菌叢が変化し、これが脂肪肝や高中性脂肪血症の原因となることが明らかになっています。具体的には、1日あたりの糖質摂取量が体重1kgあたり4g以上(体重60kgの方で240g以上)になると、肝臓での脂肪合成が著しく増加することが報告されています。

実際の食品で考えると、500mlのコーラには約55gの糖質が含まれており、これだけで相当量の糖質摂取となってしまいます。白米茶碗1杯(150g)には約55gの糖質が含まれているため、食事以外の間食や飲み物での糖質摂取には特に注意が必要です。

 

腸内細菌と肝臓の深い関係~腸肝軸とは~

最近の研究で注目されているのが「腸肝軸(ちょうかんじく)」という概念です。これは、腸と肝臓が密接に連携して体全体の代謝を調整するシステムのことを指します。腸内細菌の種類やバランスが変化すると、肝臓での脂肪代謝にも大きな影響を与えることが分かってきました。

糖質を過剰に摂取すると、腸内の悪玉菌が増加し、善玉菌が減少します。この状態では、腸管から肝臓へと有害な物質が移行しやすくなり、肝臓での炎症や脂肪蓄積が促進されます。理化学研究所の研究では、特定の腸内細菌がトランス脂肪酸などの有害な脂質を産生し、これが肥満や脂肪肝の悪化につながることが示されています。

一方で、食物繊維を豊富に摂取することで善玉菌が増加し、肝臓の脂肪蓄積を抑制する効果があることも確認されています。このように、腸内環境を整えることは脂肪肝の改善において非常に重要な要素となっています。

 

生活で気をつけるべき具体的なポイント

脂肪肝の改善には、以下の具体的な数値を目標とした生活改善が効果的です。まず、糖質制限については、1日の糖質摂取量を体重1kgあたり2-3g以下(体重60kgの方で120-180g以下)に抑えることを目標としてください。これは、主食を通常の2/3程度に減らし、間食の甘いものを控えることで達成可能です。

運動については、週150分以上の中強度運動(早歩き程度)が推奨されています。これを1日に換算すると約20分の運動となります。また、筋力トレーニングを週2回以上行うことで、筋肉での糖の消費が促進され、脂肪肝の改善により効果的です。

食物繊維の摂取については、1日25g以上を目標としてください。野菜なら350g以上、きのこや海藻類を積極的に取り入れることで達成できます。また、オメガ3脂肪酸を含む魚類を週2-3回摂取することも、肝臓の炎症を抑制する効果があります。

体重管理については、現在の体重の3-5%の減量を3-6ヶ月かけて行うことが理想的です。急激な減量は逆に肝臓に負担をかける可能性があるため、月1-2kgのペースでの減量を心がけてください。

 

うめもとクリニックでの検査について

当院では、脂肪肝の評価により正確な診断を行うため、最新の超音波診断装置を導入しております。この装置には「Attenuation計測(ATT)」という機能が搭載されており、肝臓の脂肪化の程度を数値で客観的に評価することができます。

従来の超音波検査では、検査者の主観的な判断に頼る部分がありましたが、ATT機能により、肝臓の脂肪含有量を定量的に測定できるようになりました。この検査はワンボタンで簡単に行うことができ、患者さんにとっても負担の少ない検査です。

また、治療効果の判定にも非常に有用で、生活習慣の改善や治療により脂肪肝がどの程度改善されているかを数値で確認することができます。これにより、患者さんのモチベーション維持にもつながり、より効果的な治療が可能となっています。

まとめ

脂肪肝は「脂肪の摂りすぎ」ではなく、「糖質の摂りすぎ」が主要な原因であることをご理解いただけたでしょうか。新しい分類であるMASLDという概念により、この疾患が代謝異常と深く関わっていることも明らかになっています。

腸内細菌と肝臓の関係性も重要な要素であり、食物繊維を豊富に含む食事や適度な運動により腸内環境を整えることが、脂肪肝の改善につながります。具体的な数値目標を設定し、段階的に生活習慣を改善していくことが成功の鍵となります。

当院では脂肪肝の状態を正確に評価し、一人ひとりに最適な治療方針をご提案いたします。脂肪肝を健康診断で指摘された方、お気軽にご相談ください。一緒に健康な肝臓を取り戻していきましょう。

 

引用文献
  1. 日本消化器病学会・日本肝臓学会. 脂肪性肝疾患の日本語病名に関して. 2024年8月22日発表
  2. 名古屋大学大学院医学系研究科. 砂糖のとりすぎによる脂質代謝異常の原因となる腸内細菌を特定. 2021年3月26日
  3. 理化学研究所. 悪玉脂質を産生する腸内細菌が肥満を悪化させる. 2023年1月18日
  4. 静岡県立大学. 脂肪肝の重症型である非アルコール性脂肪肝炎に対する腸内細菌代謝物の治療効果を発見. 2023年11月7日
  5. 富士フイルムヘルスケア. 超音波診断装置における減衰計測"iATT"の開発. INNERVISION 技術解説
  6. 日本肝炎情報センター. 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患. https://www.kanen.jihs.go.jp/
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