メニュー

【院長ブログ】訪問STによる嚥下リハビリに、ジェントルスティムEXを導入しました

[2026.05.03]

四国山脈の山々が新緑に染まり、重信川の桜もすっかり葉桜になりました。ゴールデンウィークでご実家に帰られる予定の方も多いのではないでしょうか。クリニックでは時に患者さんやご家族から「親の食事の様子が変わっていて心配」「むせが増えたような気がする」といった質問を受けます。

当院では、そのような飲み込みの不安に応えるため、訪問リハビリテーションを担当する言語聴覚士(ST)が、摂食嚥下リハビリ用の医療機器ジェントルスティムEXを導入いたしました。今回はその概要と、私たちが何を大切にしているかをお伝えします。

嚥下障害のサインと放置するリスク

嚥下障害とは、食べ物や飲み物を口から胃まで送り込む一連の動きが、うまくいかなくなる状態のことです。むせる、飲み込みに時間がかかる、食後に痰が増える、声がガラガラする。こうしたサインは、ご家族から見ればちょっと変だなという程度の変化かもしれません。

しかし、嚥下障害を放置すると、誤嚥性肺炎や低栄養、脱水、体重減少へとつながっていきます。日本人の死因の上位に位置する肺炎の多くが、高齢者の誤嚥性肺炎であることはよく知られています。さらに見落としがちなのが、食べる楽しみそのものが失われていくことです。これは数字には表れにくいですが、ご本人にとっては非常に大きな喪失となります。

特に、脳卒中後の方やパーキンソン病、認知症、そして加齢に伴うサルコペニア(筋肉の減少)がある方では、嚥下機能が低下しやすくなります。年のせいで片づけず、早めに専門的な評価を行うことが大切です。

飲み込みを支える筋肉と感覚のメカニズム

嚥下リハビリと聞くと「のどの筋肉を鍛えるトレーニング」を思い浮かべる方が多いのですが、実はそれだけでは不十分です。スムーズな飲み込みには、筋肉の働きとのどが食べ物や唾液を感じ取る感覚、その両方が必要です。

のどの感覚が鈍くなると、飲み込みのスイッチが入るタイミングが遅れ、食べ物が気管に入りやすくなります。さらに厄介なのは、誤嚥してもむせない不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)という状態です。筋肉と感覚は、いわば飲み込みを支える二人三脚のパートナーであり、どちらが欠けても安全な食事は成り立ちません。だからこそ、嚥下リハビリでは両面へのアプローチが求められます。

ジェントルスティムEXによる新しいリハビリの選択肢

ジェントルスティムEXは、首に電極を貼付し、電気刺激によって嚥下リハビリを補助する医療機器です。従来機の感覚刺激モードに加え、新たに筋収縮モードが搭載されたのが大きな特徴です。本機器の主なモードと特徴は以下の通りです。

モード名称 特徴と期待される効果
感覚刺激モード 咽頭・喉頭周辺への干渉波刺激により感覚入力を高めます。認知症の方や指示理解が難しい方でも、嚥下反射や咳反射の改善を目指すことが可能です。
筋収縮モード 飲み込みに関わる筋群へ直接刺激を加え、舌骨や喉頭の挙上といった嚥下運動のトレーニングを補助します。

研究報告では、1日15分×2回・週5日・2週間の介入により、咳反射の反応性の改善や経口栄養摂取量の増加が示されています。ただし、これは単体で障害を治す機械ではなく、あくまで言語聴覚士(ST)による専門的なリハビリを補助するための選択肢の一つです。

ご家族で確認できる嚥下機能セルフチェック

ゴールデンウィークにご実家へ帰省された際、ご両親やご親族の様子を振り返ってみてください。次の項目のうち、3つ以上当てはまる場合は、嚥下機能の評価をおすすめします。

  • 食事中にむせることが、以前より増えた。
  • 水やお茶など、サラサラした液体で特にむせる。
  • 食事を終えるのに30分以上かかるようになった。
  • 食後に声がガラガラしたり、痰がからんだりする。
  • 食事の途中で疲れてしまい、食べるのをやめてしまう。
  • 半年間で体重が2〜3kg以上減少した。
  • 最近、原因不明の発熱を繰り返している。

特に発熱を繰り返している場合は、不顕性誤嚥による肺炎の可能性も考えられますので、早めにご相談ください。

生活の場で支える訪問リハビリテーションの役割

当院の訪問リハビリテーションでは、言語聴覚士がご自宅にお伺いし、実際の食卓や椅子、食器、介助の様子を確認しながらリハビリを行います。病院の診察室では見えてこない生活環境の細かな要因が、飲み込みには大きく影響するからです。

ジェントルスティムEXはコンパクトで持ち運びが可能なため、ベッドサイドや椅子に座ったままでもリハビリに組み込みやすい機器です。STは食事中のむせ、声の変化、姿勢、食形態の調整、とろみの濃度などを総合的に確認し、機器の使用が適切かを判断します。

また、在宅療養ではご家族への支援が欠かせません。「どの食事が安全か」「むせた時にどう対応すべきか」といった日々の不安に対し、具体的な指導を通じて暮らし全体を支えていきます。

※ペースメーカーなどの植込み型医療機器を使用されている方や、頸部の皮膚に炎症がある方など、使用に慎重な判断が必要なケースもあります。可否については医師とSTが個別に評価いたします。

まとめ:食べる楽しみを、できるだけ長く

嚥下障害は命に関わる問題であると同時に、生活の質(QOL)に直結する大きな課題です。食べることは生きる喜びそのものであり、私たちはその楽しみを一日でも長く守りたいと考えています。

新しい機器の導入によりアプローチの幅は広がりましたが、最も大切なのは、医師による全身評価、STによる嚥下評価、環境調整、そして栄養管理の統合です。ご家族の「むせ」が気になる方や、ご自身の飲み込みに不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に、ご自宅での食べる楽しみを守っていきましょう。

引用文献

  1. Furuta T, et al. Interferential electric stimulation applied to the neck increases swallowing frequency. Dysphagia. 2012;27(1):94-100. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21607745/

  2. Maeda K, et al. Interferential current sensory stimulation, through the neck skin, improves airway defense and oral nutrition intake in patients with dysphagia: a double-blind randomized controlled trial. Clinical Interventions in Aging. 2017;12:1879-1886. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5683771/

  3. Hara K, et al. Cervical Interferential Current Transcutaneous Electrical Sensory Stimulation for Patients with Dysphagia and Dementia in Nursing Homes. Clinical Interventions in Aging. 2020;15:2431-2437. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33456308/

  4. Assoratgoon I, et al. Sensory neuromuscular electrical stimulation for dysphagia rehabilitation: A literature review. Journal of Oral Rehabilitation. 2023;50:157-164. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10286766/
  5. 株式会社フードケア「ジェントルスティムEX」製品情報 https://www.food-care.co.jp/product/medical/gs-ex/

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME