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【院長ブログ】認知症新薬レケンビ・ケサンラとは?アルツハイマー型認知症の新たな治療選択肢を解説

[2025.07.13]

最近、認知症の新しい治療薬「レケンビ」と「ケサンラ」について、患者さんやご家族から多くのご質問をいただいています。これらの薬は、従来の認知症治療とは異なる画期的な仕組みを持っており、アルツハイマー型認知症の治療の新たな選択肢です。今回は、これらの新薬について、ご説明いたします。


アルツハイマー型認知症治療の新しい選択肢!レケンビ・ケサンラの仕組み

レケンビ(一般名:レカネマブ)は2023年12月に、ケサンラ(一般名:ドナネマブ)は2024年11月に発売された、全く新しいタイプの認知症治療薬です。これまでの認知症治療薬は、症状を和らげることが主な目的でしたが、これらの新薬は「疾患修飾薬」と呼ばれ、認知症の進行そのものを遅らせることを目的としています。

両薬剤の共通点は、アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβ」というタンパク質を直接除去することです。アミロイドβは、健康な脳では適切に処理されますが、アルツハイマー病では脳に蓄積し、神経細胞にダメージを与えます。レケンビとケサンラは、この蓄積したアミロイドβを取り除くことで、病気の進行を遅らせる効果が期待されています。

国際的な大規模臨床試験では、レケンビで認知機能の低下を27%抑制し、ケサンラでは病気の進行を最大35.1%遅らせることが確認されています。これは、患者さんの症状の悪化を数か月から1年遅らせる可能性があることを意味しています。患者さんとご家族にとって、「数か月から1年以上遅らせること」が意味があると感じられるなら、検討する価値があると考えています。


レケンビとケサンラの違いは?投与方法と効果の比較

両薬剤は同じような目的で使用されますが、投与方法や作用の仕方にいくつかの違いがあります。

レケンビは2週間に1回の点滴投与で、18か月間の治療が基本となります。一方、ケサンラは月1回の点滴投与で、最大18回まで投与可能です。投与頻度の違いにより、患者さんの通院負担も異なってきます。

作用の仕方にも違いがあります。レケンビは比較的早い段階のアミロイドβに作用するのに対し、ケサンラはより固まったアミロイドプラーク(アミロイドβの塊)に対して作用します。ケサンラの方がアミロイドβを分解・除去する効果が高い一方で、副作用の頻度がやや多めとされています。実際使用されている先生方にお伺いするとそれほど違いは感じないという意見もあります。

薬価についても違いがあり、レケンビは年間約298万円、ケサンラは年間約308万円となっています。どちらの薬を選択するかは、患者さんの病状や体質、治療の希望などを総合的に考慮して、導入施設の医師と相談しながら決定します。


治療を受けられる条件と必要な検査について

これらの新薬による治療を受けるためには、いくつかの条件があります。

まず、対象となるのは「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」または「アルツハイマー病による軽度の認知症」の患者さんに限られます。認知症が中等度以上に進行している場合は、残念ながら治療効果が期待できません。

また、脳内にアミロイドβが蓄積していることを確認する必要があります。これは、アミロイドPET検査や髄液検査によって調べることができます。これらの検査により、アルツハイマー病の診断を確実にし、治療効果が期待できる患者さんを適切に選択します。

さらに、これらの薬剤は特定の医療機関でのみ使用できます。認知症の専門診療を適切に行える基準を満たした医療機関、または認知症疾患医療センターなどの専門施設での治療が必要です。当院は、フォローアップ施設として適切な連携医療機関をご紹介し、導入後の継続治療を当院で受けられるように体制を整えています。

 

気になる副作用と安全性について

新薬による治療を検討する際、副作用についても十分に理解しておくことが重要です。

最も注意すべき副作用は、ARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる脳の腫れや出血です。レケンビでは約17.3%、ケサンラではさらに高い頻度で発生することが報告されています。多くの場合は軽度で無症状ですが、まれに重篤な症状を引き起こすことがあります。

そのため、治療中は定期的なMRI検査による監視が必要です。レケンビでは治療開始後5回目、7回目、14回目に、ケサンラでは2回目、3回目、4回目、7回目、14回目にMRI検査を実施します。

その他の副作用として、点滴による反応(26.4%)、頭痛、発熱などが報告されています。これらの副作用が現れた場合は、治療の一時中断や中止を検討することもあります。

治療を安全に進めるためには、経験豊富な医療チームによる適切な監視と管理が不可欠です。患者さんやご家族には、副作用の兆候について十分にご説明し、何か異常を感じた際は迅速に医療機関に相談していただくことが重要です。

 


治療費用と保険適用の現状

新薬治療の費用は確かに高額ですが、日本では健康保険と高額療養費制度が適用されるため、実際の自己負担額は大幅に軽減されます。

レケンビの薬価は年間約298万円、ケサンラは年間約308万円ですが、保険適用により3割負担の場合でも、高額療養費制度の利用で実際の負担は大幅に軽減されます。70歳以上の一般所得層の方の場合、年間の自己負担上限額は約14万円程度となります。

月単位で見ると、保険適用後の自己負担額は、1割負担で約3万3千円、2割負担で約6万6千円、3割負担で約9万9千円となりますが、高額療養費制度により、実際の負担はさらに軽減されます。

ただし、これらの薬剤費以外にも、定期的な検査費用や通院費用なども発生します。治療を検討される際は、トータルの費用について事前に医療機関やソーシャルワーカーにご相談いただくことをお勧めします。

 

従来の認知症治療薬との違いと今後の展望

これまでの認知症治療薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで症状を和らげる「対症療法」でした。これらの薬は認知症の進行を遅らせる効果もありますが、病気の根本的な原因には作用しません。

一方、レケンビとケサンラは、アルツハイマー病の原因物質に直接作用する「疾患修飾薬」として、全く新しいアプローチを提供しています。これらの薬は、既存の治療薬と併用することも可能で、より包括的な治療が期待できます。

現在、さらに多くの認知症治療薬が開発中であり、将来的にはより効果的で副作用の少ない治療選択肢が増えることが期待されています。また、早期診断技術の向上により、より適切なタイミングで治療を開始できるようになることも期待されています。

まとめ

認知症治療は大きな転換点を迎えており、患者さんとご家族にとって希望の持てる時代になりつつあります。当院では、最新の治療情報を提供し、患者さん一人ひとりに最適な治療選択肢をご提案させていただきます。認知症について心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。

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