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【院長ブログ】2025年インフルエンザ異例の大流行 ~A型変異株サブクレードKと罹りやすい5つのタイプ~

[2025.11.23]

朝夕の冷え込みが一段と厳しくなり、本格的な冬の到来を感じる季節となりました。最近、患者さんやご家族から「孫や子どもが感染してしまいました」「ワクチンを打ったのに感染したけどどうしたらいいですか」といったご質問やお声を数多くいただいております。実際、今シーズンのインフルエンザは例年より約2ヶ月早く流行が始まり、専門家からは「過去10年間で最大規模の流行」になる可能性が指摘されています。この異例の状況の背景には何があるのでしょうか。

2025年のインフルエンザの現状

厚生労働省の最新の発表(2025年11月21日)によると、2025年第46週(11月10日~16日)のインフルエンザ定点あたり報告数は全国平均37.73人となり、前週から1.7倍の急激な増加を示しています。通常であれば、インフルエンザの流行は12月下旬から1月にかけて本格化するのですが、今シーズンは既に急激な拡大を見せています。

この季節外れの早期流行の背景には、複数の要因が重なっています。まず、4月中旬に開催された大阪・関西万博などの国際的イベントや、日本観光ブームによるインバウンド増加が関係していると考えられます。特に、冬を迎えた南半球からの旅行者が持ち込んだウイルスが、猛暑による換気不足の環境下で拡散した可能性があります。

さらに重要なのは、感染症対策への意識の変化です。公共交通機関でのマスク着用率が低下し、COVID-19パンデミック時に比べて一般的な感染対策の意識が薄れていることも、流行拡大の一因と考えられます。秋以降は換気改善による沈静化が期待されましたが、予想外の寒冷気候により換気不足が続いたことも影響しています。

サブクレードKとは?ワクチンと変異株の関係

東京大学医科学研究所・河岡研究室の解析によると、医療機関から提供された検体のうち、A型H3N2の41検体中40例からサブクレードKが検出されています。この変異株は、従来株やワクチン株と抗原性がずれていることが報告されています。

抗原ドリフトと呼ばれるこの現象は、ウイルスが人間の免疫システムから逃れるために遺伝子を変化させるメカニズムです。その結果、既存の免疫(ワクチンや過去感染による抗体)が十分に作用しない可能性があります。2025-26シーズンのワクチンはサブクレード2系統を基準としており、サブクレードKとは抗原性が異なるため、ワクチンの効果が従来より低下している可能性があります。

ただし、ワクチン効果が完全になくなるわけではありません。重症化予防の観点から、ワクチン接種は引き続き強く推奨されます。また、すでにインフルエンザに罹患したお子さんに対しても、現在流行中のH3N2以外のA型H1N1またはB型インフルエンザの流行も想定されるため、ワクチン接種回数の完遂が重要です。

インフルエンザに罹りやすい人とは?5つのタイプを解説

「なぜ人によってインフルエンザにかかりやすさが違うのか」という疑問に対して、弘前大学・京都大学・大正製薬の共同研究チームが、約1,000人規模の健康ビッグデータを解析し、インフルエンザ発症リスクとの関係を報告しています。この研究から、インフルエンザに罹りやすい人の傾向として、以下の5つのタイプが明らかになりました。

血糖が高め 血糖が高い状態が続くと、免疫細胞の働きが鈍くなり、ウイルスへの抵抗力が弱まります。糖尿病患者だけでなく、境界型や血糖値がやや高めの方も含まれます。
肺炎の既往あり 過去に肺炎を経験したことがある方は、もともと感染症に対する抵抗力が弱い可能性があり、呼吸器系のバリア機能が低下している傾向があります。
多忙・睡眠不足 仕事や生活が忙しく、質の良い睡眠が取れていない状況では、免疫力が低下します。インフルエンザと同様の感染症である「かぜ」では、睡眠時間が短いと罹患頻度が高まるという報告があります。
栄養不良 食事のバランスが偏り、特に野菜の摂取が少ない方では、免疫機能の維持に必要な栄養素が不足し、感染への抵抗力が低下します。
アレルギーあり アレルギー検査値(雑草やスギ)が高く、アレルギー性鼻炎などのアレルギー体質の方では、慢性的な炎症や鼻づまりが呼吸器のバリア機能を弱め、ウイルス感染のきっかけになりやすいと考えられます。

特に重要な発見は、複数の要因の組み合わせがリスクを大きく左右することです。「肺炎の既往がある」「血糖が高め」「睡眠の質が良くない」といった複数の特徴を持つグループでは、それ以外のグループと比べてインフルエンザの発症リスクが約3.6倍になることが明らかになりました。

タイプ別アドバイス|インフルエンザ予防と対策

上記の研究結果を踏まえ、それぞれのタイプに応じた具体的な予防対策をご紹介します。

血糖が高めの方 雑穀米や玄米など食物繊維の多い主食を選び、食事は野菜から先に食べることを心がけましょう。1日15~30分の軽い運動も、血糖コントロールと免疫維持に効果的です。
肺炎の既往がある方 部屋の湿度を40~60%に保ち、手洗いを徹底しましょう。鼻呼吸を意識し、β-カロテンやビタミンA・Cを含む野菜を摂取することで、粘膜の健康を維持できます。
多忙・睡眠不足の方 質の良い睡眠を最優先にしてください。魚介類や肉類から良質なタンパク質を摂り、就寝1時間前にはデジタル機器から離れ、リラックスできる環境を整えましょう。
栄養不良の方 毎食で主食・主菜・副菜をそろえ、色とりどりの野菜・果物と良質なたんぱく質をバランスよく摂取しましょう。朝食を抜かないことも免疫力維持に重要です。
アレルギー体質の方 青魚を週2~3回取り入れ、ビタミンC・E・ポリフェノールを含む果物や緑茶で抗酸化力を補いましょう。油や加工食品の摂りすぎには注意が必要です。

すべての方に共通する基本対策として、手洗い、換気、混雑時のマスク着用、こまめな水分補給は継続して実践していただきたいと思います。

受診のタイミングについて

インフルエンザの治療において、抗ウイルス薬は発症から48時間以内の投与が最も効果的とされています。そのため、38℃以上の急な発熱、強い関節痛や筋肉痛、悪寒、全身の倦怠感などが出現時はご相談ください。適切な受診タイミングをご案内致します。特に小児、65歳以上の高齢者、妊婦さん、慢性疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患など)をお持ちの方は、重症化のリスクが高いため、注意が必要です。当院では、多項目同時PCR検査、抗原検査など迅速なインフルエンザ検査体制を整え、適切な抗ウイルス薬の処方により重症化予防に努めております。

まとめ

今シーズンのインフルエンザは、H3N2サブクレードKという変異株の出現により、例年以上に注意が必要な状況となっています。症状が出現時は適切なタイミングで医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重症化を防ぐ最も確実な方法です。この厳しい冬を、地域の皆さまと一緒に乗り越えていきましょう。ご不安なことがございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

引用文献

1. 東京小児科医会公衆衛生委員会「早期のインフルエンザ大流行、何が起きているのか」2025年11月21日

2. 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」2025年11月21日

3. 弘前大学・京都大学・大正製薬共同研究「健康ビッグデータ解析によるインフルエンザ罹患リスク要因の同定」Scientific Reports, 2025年8月

4. 東京大学医科学研究所・河岡研究室「A型H3N2サブクレードKの解析データ」2025年11月

5. 国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベルマップ」2025年11月

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