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【院長ブログ】健診で血圧やコレステロールを指摘されたら。~放置と将来の"もの忘れ"の意外な関係~

[2026.08.02]

健診の結果表を前にして、「血圧が少し高い」「コレステロールに印がついている」。でも体はどこも痛くないし、困っていることもない。そんなとき、つい引き出しにしまい込んでしまう方は少なくありません。外来でも「症状がないので、そのままにしていました」というお話をよく伺います。その気持ちは、正直よくわかります。ただ、こうした数値は今の体調だけでなく、少し先の脳の健康とも関わっているかもしれない、という研究が近年報告されています。この記事では、その関係と、今からできることを一緒に整理していきます。

血圧やコレステロールと脳は、思っている以上につながっている

血圧やコレステロール、血糖といえば、心臓や血管の話だと思われがちです。実際その通りなのですが、同じ血管は脳にもつながっています。脳はとても多くの血液を必要とする臓器なので、血管の状態がじわじわと脳の働きに影響していく、というのは自然な話でもあります。

近年の研究では、血圧が高いこと、いわゆる悪玉と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪が高いこと、糖尿病、喫煙、体重が多めであることなどが、将来の認知症のなりやすさと関連しうることが示されました。興味深いのは、この研究が単なる「関連がありそう」という段階にとどまらず、遺伝情報を手がかりにして、原因と結果の関係により踏み込んで調べる方法を使っている点です。つまり「生活習慣のリスクが、結果として脳の健康に影響しているらしい」という方向まで、慎重に検討されています。

しかも、その影響は血管の問題から起こるタイプの認知症で特にはっきりしていたと報告されています。血管を通じたみちすじ、因果関係が背景にあるのでは、と考えられるわけです。心臓や血管のためによいとされてきたことが、そのまま脳を守ることにもつながっているのかもしれない、と考えると、少し見え方が変わってきませんか。

症状がない時期こそ、実は分かれ道

「今、困っていないから大丈夫」と感じるのは自然なことです。ただ、生活習慣にまつわる数値は、痛みやつらさといったサインを出さないまま、静かに積み重なっていく性質があります。ここが少し厄介なところです。

40代から60代あたりで健診に引っかかる方はとても多く、その多くが「自覚症状はない」とおっしゃいます。決して珍しいことではないのですが、生活習慣に関わる異常は、痛みやつらさを出さないまま静かに進むことがあります。症状がないことと、血管への負担がないことは同じではありません。

日本高血圧学会の2025年のガイドラインでも、高血圧の診断基準は、診察室血圧で140/90 mmHg以上、家庭血圧で135/85 mmHg以上とされています。一度だけ高かったからといって、すぐに高血圧と決まるわけではありませんが、「上が140くらいだから大したことはない」「年齢のせいだから」と放置せず、家庭でも血圧を測ってみることが大切です。

コレステロールも同じです。一般にLDLコレステロールは140 mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」、120~139 mg/dLで「境界域」とされます。ただし、薬が必要かどうかは数字だけでは決まりません。年齢、喫煙、糖尿病、腎臓病、血圧、脳梗塞や心筋梗塞の既往などを合わせて判断します。反対に、自覚症状がないからといって、高いLDLコレステロールを長く放置してよいわけでもありません。

大切なのは、放置と管理の差が、症状のない今の時期にこそ生まれている可能性がある、ということです。悪玉コレステロールや血圧といった項目は、体からの痛みという合図がないぶん、結果表の数字が数少ない手がかりになります。だからこそ、健診の紙は体からの静かなお便りくらいに受け止めていただけるとちょうどよいかもしれません。

カギは早さ。手を打つなら、進んでしまう前に

ここで大切なのは、「いつ整えるか」というタイミングです。

血圧を管理することと認知機能の関係を調べた別の研究では、心臓・腎臓・代謝(血糖や脂質)が絡み合った状態がまだ進んでいない段階の方では、血圧をしっかり管理することで将来の認知症のリスクが低くなる傾向が示されました。一方で、その状態がすでに進んでしまっていた方では、はっきりした差は見られなかったと報告されています。

ここから読み取れるのは、「進んでしまう前の早い段階で整えることに意味がありそうだ」という示唆です。裏を返せば、健診で指摘された今このタイミングは、対策を考えるうえでむしろ好機だといえます。「もう歳だから」と思う必要はありませんし、「まだ大丈夫」と先送りするのも、少しもったいない。ちょうど今が、動き出すのによい頃合いなのです。

血圧は低ければ低いほどよい?

ここまで読むと、「血圧は低ければ低いほどよいのですか」と思われるかもしれません。

例えば血圧が110~120/60~70 mmHg程度で、めまい、ふらつき、失神、強いだるさなどがなければ、一般には低すぎる血圧とは考えません. むしろ、多くの方にとって良好な範囲です。もともと低めの方もいますし、測定条件によって一時的に低く出ることもあります。

ただし、何度測っても血圧が90/60が続き、立ちくらみやふらつきがある場合や、高齢の方、心臓病のある方、降圧薬を飲んでいる方は、一度ご相談ください。薬の効き方だけでなく、脱水、貧血、不整脈などが隠れていないか確認した方がよいことがあります。

大切なのは、数字だけで判断するのではなく、普段からの変化や症状を一緒に見ることです。血圧が低いと感じても、薬は自己判断で中止せず、主治医に相談してください。

コレステロールは、どこまで下げればよい?

健診でLDLコレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」が140mg/dLを超え、「すぐに薬を飲んだ方がよいですか」と相談されることがあります。一般にLDLコレステロールは140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」、120~139mg/dLで「境界域」とされます。ただし、これは異常を見つけるための基準であり、そのまま全員の治療目標になるわけではありません。

LDLコレステロールの目標は、将来、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性によって変わります。これまでにそうした病気を起こしていない方では、年齢、血圧、喫煙、糖尿病、腎臓病などをもとにリスクを評価し、LDLコレステロール160mg/dL未満、140mg/dL未満、120mg/dL未満など、目標を個別に設定します。

一方、すでに心筋梗塞や動脈硬化による脳梗塞を経験している方では、再発予防のため、一般に100mg/dL未満を目指します。さらに危険性が高い方では、70mg/dL未満を目標にすることもあります。同じ「LDLコレステロール140」でも、健康な若い方と脳梗塞を経験した方では、意味がまったく違うのです。

治療は、食事や運動、体重管理などの見直しから始めることもあれば、最初から薬を検討した方がよい場合もあります。特に未治療でLDLコレステロールが180mg/dL以上ある場合や、若くして心筋梗塞を起こしたご家族がいる場合は、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」が隠れていないか確認が必要です。

大切なのは、「140を超えたら全員が薬」「少し下がったからもう安心」と数字だけで判断しないことです。ご自身の目標値がどこにあるのかを確認し、その目標に合わせて無理なく管理していきましょう。

受診の目安と、うめもとクリニックで相談できること

まずは落ち着いて、という前提でお伝えします。以下のような場合は、一度ご相談いただくと安心です。

  • 健診で血圧・コレステロール・血糖などを指摘され、そのままにしている
  • どこまで気をつければよいのか分からず、判断に迷っている
  • ご家族の物忘れが気になり、自分の将来も少し不安に感じている

うめもとクリニックは、松山市で内科・脳神経内科・リハビリテーション科を診療しています。健診結果の背景を丁寧に確認し、生活習慣の見直しから必要な検査、日常の生活指導まで、その方に合った形を一緒に考えていきます。健診結果で気になる項目があれば、どうぞ気軽にお持ちください。

まとめ

血圧やコレステロール、血糖といった数値は、症状がなくても将来の脳の健康と関わりうることが、近年の研究から少しずつ見えてきました。そして、整えるなら進んでしまう前の早い段階のほうが意味を持ちやすいようです。だからこそ、健診で指摘された今が、相談を始めるのによいタイミングになります。これは将来のための、今できる小さな一歩です。ひとりで抱え込まず、無理のないやり方から、一緒に整えていきましょう。

免責事項

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、個々の診断・治療方針を示すものではありません。ご紹介した研究は主に海外(欧州系など)のデータに基づくものを含み、今後さらなる検証が期待される内容も含みます。

引用文献・参考資料

  1. Luo J, et al. Causal insights of modifiable cardiovascular risk factors for dementia risk – potential for efficient prevention and improved brain health. Atherosclerosis. 2026;419:120824.
  2. Wang, et al. Cardiovascular–kidney–metabolic syndrome stage modifies the efficacy of intensive blood pressure control on cognitive outcomes: A post hoc analysis of SPRINT MIND. Alzheimers Dement. 2026;22(7):e71623.
  3. Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024.
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