メニュー

【院長ブログ】暖かくなる春、もっと安心して歩くために 〜パーキンソン病・脳卒中後遺症と「転倒予防」のトータルサポート〜

[2026.04.05]

桜の花も散り始め、少し遠くまで足を延ばしたくなる季節です。先日、ある患者様から「最近足元がおぼつかなくて……」というご相談を受けました。冬の間、寒さを避けて家に閉じこもりがちだったことで、廃用症候群フレイルが進行しているケースは少なくありません。本日は、パーキンソン病や脳卒中後遺症をお持ちの方、そしてそのご家族に向けて、春に増える転倒リスクと、それを防ぎながら再び安心して歩くための医療と介護の連携についてお話しします。

春先に転倒リスクが高まる原因と冬の間の活動量低下について

一般的に、冬は転倒が多いイメージがあるかもしれません。しかし、実は春先こそ注意が必要です。その最大の原因は、冬の間の活動量の低下にあります。寒さで外出を控えている間に、私たちの筋肉は驚くほどの速さで衰えていきます。特に高齢の方や神経疾患をお持ちの方の場合、たった数週間の不活発な生活が、歩行の安定性を大きく損なうことがあります。

そこに「暖かくなったから動いてみよう」という意欲が加わることで、身体機能と気持ちのギャップが生じ、思わぬ転倒事故につながりやすくなるのです。実際、地域包括ケアシステムに関連する調査などでも、季節の変わり目に活動量が急増する際、転倒による骨折リスクが高まることが示唆されています。特にパーキンソン病や脳卒中後遺症のある方にとって、転倒は単なる怪我だけでなく、その後の寝たきり生活の入り口になりかねない重大な問題です。

パーキンソン病のすくみ足と脳卒中後遺症による痙縮の特徴

なぜ、これらの病気を持つ方は転倒しやすいのでしょうか。ここでは代表的な二つの症状について、専門的な視点から解説します。

最初の一歩が踏み出しにくくなるすくみ足のメカニズム

パーキンソン病の方によく見られるのがすくみ足です。歩き出そうとしても、まるで足の裏が地面に張り付いてしまったかのように動かなくなる現象です。特に、狭い場所を通る時や方向転換をする際、あるいは信号が変わって急いで渡ろうとした時などに突然現れます。上半身は前に進もうとしているのに足が出ないため、バランスを崩して前方に倒れてしまうことが多く、顔面や膝の怪我につながりやすいのが特徴です。

筋肉が過剰にこわばる痙縮による歩行への影響

一方、脳卒中の後遺症で多く見られるのが痙縮(けいしゅく)です。これは、脳からの指令がうまく伝わらないために、手足の筋肉が過剰に緊張してしまい、つっぱったり、勝手に曲がったりしてしまう状態を指します。足首が内側にねじれるように硬くなると、足の裏全体を地面につけることができず、つま先立ちのような不安定な歩行になります。ちょっとした段差につまずきやすくなり、これが転倒の大きな原因となります。

歩きにくさを改善するための専門的な治療アプローチ

「もう年だから仕方がない」「病気の後遺症だから治らない」と諦めていらっしゃいませんか? 脳神経内科医・リハビリテーション科医としてお伝えしたいのは、適切な治療介入によって、その歩きにくさは改善する可能性があるということです。

パーキンソン病に対する薬物療法とリハビリテーション

パーキンソン病の治療において、薬の調整は非常に繊細かつ重要です。症状の日内変動を見極め、患者様の生活リズムに合わせて最適なタイミングと量で服用することで、すくみ足が劇的に改善することは珍しくありません。当院では、特化したリハビリプログラムLSVT-BIG®に準じた訓練を提供しています。これは「大きな動き」を意識的に訓練することで、日常生活動作の改善を目指すものです。集中的なトレーニングを組み合わせることで、歩行能力やバランス機能が向上することが実証されています。

脳卒中後遺症の痙縮に対する装具療法と多角的なケア

脳卒中後の痙縮に対しては、飲み薬だけでなく、リハビリテーションや装具療法を組み合わせることで効果を高めます。当院では、義肢装具士と密接に連携し、患者様一人ひとりの症状に合わせた下肢装具や足底板の作製を行っています。例えば、足首が内側に曲がってしまう方には短下肢装具(AFO)を提案します。装具はつけるだけで歩きやすくなるという即効性があり、転倒予防に直接つながる重要な治療手段です。また、筋肉の緊張を和らげるボツリヌス療法などの選択肢も含め、現在の状況を詳細に評価いたします。

医療と介護の連携で実現する転倒予防のトータルサポート

診察室での治療だけでは、患者様の生活を支えきることはできません。そこで私たち「医療法人三全会」が力を入れているのが、医療と介護のシームレスな連携です。当院で脳神経内科医が診断を行い、医学的な治療方針を決定し、その情報をリアルタイムで共有して実行に移します。

うめもとクリニック 脳神経内科医が診断を行い、医学的な治療方針を決定します。
通所介護 plum 楽しみながら行える運動プログラムを通じて、低下した筋力やバランス能力の回復を目指します。
訪問リハビリ Umecliha 療法士が自宅へ伺い、実際の生活環境に合わせた機能訓練や、手すりの設置・家具の配置変更などの具体的なアドバイスを行います。

「クリニックでの治療」「デイサービスでの機能回復」「訪問リハビリでの個別訓練・環境調整」。この三つの矢が連携することで、初めて安心して歩ける春が実現すると私たちは考えています。

転倒リスクが高まっているサインと相談の目安

ご自身、あるいはご家族に、次のような変化はありませんか? それは転倒リスクが高まっているサインかもしれません。もし一つでも当てはまることがあれば、早めの対策が必要です。

「まだ介護保険のことはよくわからなくて……」という段階でも構いません。当院には経験豊富なスタッフが在籍しており、介護保険の申請からサービス利用の計画まで、トータルでサポートさせていただきます。

まとめ:春の外出を安心して楽しむために

暖かな日差しの中を自分の足で歩くことは、心身の健康にとって何よりの薬です。転倒への不安でその楽しみを諦めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。三全会グループは地域の皆様にとって、医療と介護の両面から頼れるパートナーでありたいと願っています。専門医による的確な診断と治療、そして密接に連携されたリハビリテーションで、あなたの「歩きたい」という気持ちを全力で支えます。

 

参考文献
  • 日本神経学会監修『パーキンソン病診療ガイドライン2018』
  • 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』
  • 公益社団法人 日本理学療法士協会「転倒予防マニュアル」
  • 厚生労働省「介護予防マニュアル」
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME