院長ブログ:GWに気をつけたい熱中症対策:年齢別の予防法と応急処置
ゴールデンウィークが始まりましたね。暖かい日差しの中、外出を楽しむ方も多いかと思います。しかし、意外に思われるかもしれませんが、熱中症は夏だけでなく、5月頃から発生することをご存知でしょうか?特に5月はまだ体が暑さに慣れていないため、急に気温が高くなると、熱中症のリスクが高まります。
総務省の調査によると、昨年5月~9月の熱中症による救急搬送者数は、全国で計97,578人にも上り、統計が残る平成20年以降で最も多い人数となりました。本格的に気温が上昇する夏の時期での増加が目立ちますが、昨年は5月というタイミングであっても2,799人が搬送されました。
今回は、ゴールデンウィーク中から注意頂きたい年齢別の熱中症予防法と応急処置について解説します。
熱中症とは?基本を知って予防しよう
熱中症は、高温・多湿な環境で長時間にわたり過ごすことで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまう状態です。屋外だけでなく、屋内でも注意が必要で、正しい知識を得ることで健康被害を防ぐことが重要です。
熱中症は重篤な場合は死に至ることもある病気ですが、水分補給のほか体を冷やしたり、暑さに体を前もって慣れさせたりする「暑熱順化」などの予防・対策をしていれば、未然に防ぐことができます。
今年のゴールデンウィーク前半は高気圧に覆われて晴れる日が多く、各地で行楽日和となる予報も出ています。外出を楽しむ際には、熱中症対策を忘れないようにしましょう。
子ども(0~6歳)の熱中症対策:親の配慮が重要です
就学前のお子さんは、自身で体調の変化に気づくことができない場合や、体調の変化を訴えることができない場合が多く、周りの大人の配慮がとても重要です。
統計によると、この年代の熱中症発症は「屋外活動」が50.0%、次いで「移動」が33.3%と、外出時に熱中症を発症することが多いことがわかります。
子どもの特徴として、①身長が低いため、大人に比べて地面からの照り返しの影響を強く受ける、②体温調節機能が未発達であるため、体温が上昇してから汗をかくまでに時間がかかり、身体に熱がこもりやすい特徴があります。
対策としては、まず屋外で活動する際は、帽子などを被るなどして直射日光を避けましょう。また、こまめな水分補給を心がけ、子どもが自分から「喉が渇いた」と言う前に、定期的に水分を取らせるようにしましょう。
学生(7~18歳)の熱中症対策:部活動や運動時に注意
この年代は部活動や運動会など、屋外での活動が多くなります。また、バスケットボール、バレーボール、バドミントンなどの屋内の種目でも熱中症のリスクがあるため、屋内外問わず注意が必要です。
対策としては、運動前・運動中・運動後の水分補給を徹底し、休憩時間を十分に取り、無理な運動は避けましょう。また、体調が優れない日は無理をせず、休むことも大切です。
当院では、部活動を行う学生さんには特に、運動前後の水分補給の重要性をお伝えしています。スポーツドリンクなどで適切に塩分も補給することで、熱中症予防に効果的です。
成人(19~64歳)の熱中症対策:忙しさに負けない予防を
生産年齢人口の大部分を占めるこれらの年代は、いずれのシーンにおいても熱中症リスクが高くなっています。日常生活の忙しさから、疲労の蓄積、睡眠不足、偏った食生活などが重なることで、さらにリスクが高まります。特に、仕事や家事に追われ、自分の体調管理がおろそかになりがちな方は注意が必要です。熱中症への意識・対策を始める時期は「7月」が最多という調査結果もありますが、実際には5月から対策を始めることが重要です。
対策としては、まずは十分な睡眠をとり、自律神経を整える生活を心がけましょう。外出時はこまめに水分補給を行い、特に屋外での作業時は休憩を定期的に取りましょう。加えて、通気性の良い服を着用し、暑い日の無理な運動や作業は避け、体調不良を感じたらすぐに休憩しましょう。
高齢者(65歳以上)の熱中症対策:特に注意が必要です
高齢者の方は体温の調節機能が低下しているため、暑さを自覚しにくく、熱を逃がす体の反応や暑さ対策の行動が遅れがちです。また、体内水分量の減少により脱水状態になりやすく、さらに体が脱水を察知しにくいため、水分補給が遅れがちです。対策としては気温・湿度計、熱中症計などを活用し、今いる環境の危険度を知りましょう。のどが渇く前に、定期的な水分補給をしましょう。
当院に通院されている高齢の患者さんには、特に「のどが渇いていなくても定期的に水分を取る習慣をつけましょう」とお伝えしています。
熱中症の応急処置:迅速な対応が重要です
もし熱中症かなと思ったときは、すぐに応急処置を行うことが重要です。以下の3つのポイントを覚えておきましょう。
①涼しい場所へ移動する
クーラーが効いた室内や車内に移動しましょう。屋外で、近くにそのような場所がない場合には、風通りのよい日陰に移動し安静にしましょう。
②衣服を脱がし、体を冷やして体温を下げる
衣服をゆるめて、体の熱を放出しましょう。氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などを冷やします。皮膚に水をかけて、うちわや扇子などであおぐことでも体を冷やすことができます。
③水分と塩分を補給する
冷たい水を、自分で持って飲んでもらうと、体にこもった熱を奪うだけでなく、水分補給もできます。また、経口補水液やスポーツドリンクを飲めば、汗で失われた塩分も適切に補えます。
症状が重い場合(意識がない、自力で水分摂取ができないなど)は、すぐに医療機関へ相談、または救急車を呼びましょう。
まとめ:早めの対策で安全なゴールデンウィークを
熱中症は5月頃から発生し始め、特に体がまだ暑さに慣れていない時期は注意が必要です。年齢によって注意すべきポイントは異なりますが、こまめな水分・塩分補給、適切な服装と日陰の利用、無理をしない活動計画、室内でも適切な温度管理など、熱中症対策をしっかり行いましょう。