院長ブログ:【2025年最新】熱中症対策ガイド~予防から応急処置まで解説~
皆様、こんにちは。前回から少し期間が空いてしまいました。今回は、今後湿度や気温が高い日が続くと予想され、一層の注意が必要になってくる熱中症についてお話します。今年は特に、職場での熱中症対策も法的に強化されるなど、より一層の注意が求められています。今回は、最新の熱中症対策について詳しくお話しします。
熱中症とは?症状と危険性を知ろう
熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態のことです。屋外だけでなく、室内で何もしていないときでも発症し、場合によっては死亡することもある危険な状態です。
熱中症の症状は重症度によって分類されています。軽症では、めまいや立ちくらみ、大量の汗、筋肉のこむら返りなどが現れます。中等症になると、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感が見られ、重症では意識障害や体温の異常な上昇、全身のけいれんなどの危険な症状が現れます。
特に注意していただきたいのは、熱中症は急激に悪化する可能性があることです。「少し調子が悪いかな」程度の軽い症状でも、放置すると命に関わる状態になることがあります。そのため、早期の発見と適切な対処が非常に重要になります。また、熱中症は予防可能な疾患でもありますので、正しい知識を身につけて対策を行うことが大切です。
日常生活での熱中症予防のポイント
熱中症の予防には、日常生活での心がけが最も重要です。まず基本となるのが、こまめな水分補給です。のどが渇いていなくても、室内でも外出時でも定期的に水分を摂取しましょう。大量に汗をかく場合は、水分だけでなく塩分も含んだスポーツドリンクなどを補給することが大切です。
暑さを避ける工夫も欠かせません。室内では、遮光カーテンやすだれの使用、扇風機やエアコンの積極的な活用を心がけてください。室温は28度以下、湿度は50~60%程度に保つのが理想的です。外出時は、涼しい服装を選び、日傘や帽子を着用して直射日光を避けましょう。
また、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事も熱中症予防には重要です。体調が優れない日は無理をせず、適度に休憩を取りながら過ごすことを心がけてください。気温と湿度をこまめにチェックし、暑さ指数や熱中症警戒アラートも参考にして、その日の活動レベルを調整することも大切です。室内に温湿度計を置いて、定期的に確認することをお勧めします。
特に注意が必要な方々への対策
熱中症になりやすい方々がいることを知っておくことも重要です。まず、お子さんは体温調節機能が未発達で、身長が低いため地面からの照り返しの影響を強く受けやすく、大人よりも高温の環境にさらされています。お子さん自身が体調の変化に気づかなかったり、うまく伝えられないこともあるため、周囲の大人が顔色や汗のかき方などに注意深く観察することが必要です。
高齢者の方も特に注意が必要で、熱中症で救急搬送される方の約半数は65歳以上の方です。高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能や体の調整機能が低下しており、若い人より脱水症状を起こしやすく、回復しにくい特徴があります。冷たい飲み物が苦手な方は、温かい飲み物でも構いませんし、水を飲み込むことが難しい場合は、市販の水分補給用ゼリーなども活用してください。
障害のある方で、自ら症状を訴えられない場合もあるため、特に配慮が必要です。糖尿病や高血圧症などの疾患をお持ちの方は、熱中症の発症リスクが高くなる可能性がありますので、かかりつけ医と相談の上、適切な対策を講じることをお勧めします。
職場での熱中症対策が強化されました
今年6月1日から、労働安全衛生規則が改正され、職場における熱中症対策が法的に義務化されました。これは、近年の気候変動の影響で熱中症による労働災害が増加傾向にあり、年間30人を超える死亡者が出ていることを受けた重要な改正です。
改正により、事業者には以下の対策が義務付けられています。まず、熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症のおそれがある作業者を見つけた者が、その旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に周知することです。次に、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察や処置を受けさせることなど、熱中症の症状の悪化を防止するための措置の内容と実施手順を定め、作業者に周知することが求められています。
この改正は、暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業が対象となります。職場で働く皆さんも、この新しい制度について理解し、職場での熱中症対策に積極的に参加していただくことが大切です。
熱中症になってしまったときの応急処置
もし熱中症の症状が現れた場合は、迅速で適切な対応が重要です。まず、呼びかけに答えない場合は、すぐに救急車を呼んでください。意識がある場合でも、症状に応じて適切な処置を行う必要があります。
応急処置の基本は、涼しい場所への移動、体の冷却、水分補給の3つです。まず涼しい日陰やエアコンが効いた部屋に移動し、衣服をゆるめて安静に寝かせます。体を冷やす際は、水で濡らしたタオルなどで首の周り、脇の下、太ももの付け根など太い血管の部分を冷やすと効果的です。
水分補給については、本人が自分で水分を摂取できる場合は、水分だけでなく塩分も含んだスポーツドリンクなどを少しずつ飲ませてください。急激に大量の水分を補給すると腹痛を引き起こす可能性があるため、一口ずつ口に含むようにしながらこまめに飲ませることが大切です。スポーツドリンクがない場合は、水と一緒に梅干しなどで塩分補給を行ってください。
軽症の場合でも、誰かがそばに付き添って見守り、症状が改善しない場合や悪化する場合は病院への搬送が必要です。病院に行くべきか救急車を呼ぶべきか迷った場合は、#7119に相談することもできます。
まとめ
熱中症は予防可能な疾患ですが、発症すると重篤な状態になる可能性があります。こまめな水分補給と暑さを避ける工夫を基本に、特にお子さんや高齢者、持病をお持ちの方は十分な注意が必要です。今年から職場での熱中症対策も法的に強化されましたので、働く皆さんもこの制度を活用して安全に作業を行ってください。
もし熱中症の症状が現れた場合は、軽視せずに適切な応急処置を行い、必要に応じて医療機関を受診してください。うめもとクリニックでも、熱中症に関するご相談や体調不良のご相談をお受けしていますので、気になることがございましたら遠慮なくお声かけください。