院長ブログ:RSウイルス感染症から身を守る新ワクチン
RSウイルスは乳幼児の呼吸器感染症の原因として知られていますが、実は高齢者にとっても無視できない深刻な脅威となっています。今日は新しいワクチン「アレックスビー®」と「アブリスボ®」について紹介します 。
RSウイルスとは
RSウイルス(Respiratory Syncytial virus)は2歳までにほぼ全ての子どもが感染しますが、その後も生涯にわたって何度も再感染と発症を繰り返します。
日本でも60歳以上の成人において、RSウイルスに寄って約63000人が入院し、約4500人が死亡していることが推測されています。
これまでRSウイルス感染症に対する特効薬はなく、対症療法で症状を和らげることしかできませんでした。
アレックスビー®
アレックスビーは、60歳以上の高齢者向けのRSウイルスワクチンです。ワクチンの接種によって、60歳以上の高齢者において、
・RSウイルス感染の発症リスクが4分の1~5分の1に減少 ・RSウイルス感染による入院リスクが約5分の1に減少 ・酸素療法や人工呼吸器が必要な重症化リスクが約5分の1に減少 |
上記のように高い予防効果が確認されました 。
特に、肺気腫(COPD)、喘息、心不全、脳血管障害、糖尿病、腎臓病などの基礎疾患がある方や、免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染時に重症化するリスクが高いことが分かっており、RSウイルスワクチン接種が推奨されています。
アブリスボ®
アブリスボは当初は妊娠24-36週の妊婦さんを対象(特に28~36週に接種を推奨されています)としていましたが、今年3月に60歳以上の方への接種も承認されました。妊娠中に接種することで、母体にできたRSウイルスに対する抗体が胎盤を通じて、赤ちゃんに移行し新生児および乳児期のRSウイルス感染症による下気道疾患の発症と重症化を予防することが期待されています。これまで対策が難しかった新生児から乳幼児のRSウイルス感染症の予防が可能になりました。特徴として
・世界初の妊婦を対象とした母子免疫RSウイルスワクチン ・24-36週に接種することで、胎児に抗体が移行する(28~36週に接種を推奨) ・出生後の赤ちゃんのRSウイルス感染症にかかるリスクを軽減 |
上記が期待されています。
副作用は?
頻度は決して高くはありませんが、接種部位の痛み、頭痛、筋肉痛、発熱、過敏症などの副作用が生じる可能性があります。アブリスボで早産の増加や新生児の異常の増加は報告されていません。
接種場所、回数、費用は?
「アレックスビー」と「アブリスボ」ともに当院で接種可能です。両方とも接種回数は1回で、自費診療となります。アレックスビーは26500円、アブリスボは30000円です。
まとめ
RSウイルス感染症は、高齢の方や基礎疾患をお持ちの方、妊娠中の方に特に推奨されています。当てはまる方は、ぜひRSウイルスワクチンの接種を検討されることをおすすめします。ワクチン接種に関する詳細は、お気軽にご相談ください。