院長ブログ:糖尿病と認知症の深い関係 ~予防と早期発見の重要性~
はじめに:増加する糖尿病性認知症
今日は世界糖尿病デーです。今回は糖尿病デーにちなみ、最近注目を集めている糖尿病と認知症の関係についてご紹介致します。厚生労働省の調査によると、糖尿病の患者さんと予備軍はそれぞれ約1000万人にのぼり、多くの方にとって身近な病気となっています。特に重要なのは、糖尿病の方は糖尿病でない方と比べて認知症を発症するリスクが約2倍高くなるということです。このような状況から、認知症は糖尿病の重要な合併症の一つとして認識されるようになってきました。
糖尿病性認知症とは
糖尿病性認知症は、長期の血糖コントロール不良による神経細胞へのダメージが主な原因となって発症する認知症です。特徴的なのは、注意力や遂行機能(目的を達成するために計画的に行動する脳の機能)が低下しやすいという点です。例えば、冷蔵庫を開けた時に何を取りに来たのか分からなくなったり、料理の段取りが悪くなったりといった症状が現れます。
アルツハイマー型認知症との違いは?
アルツハイマー型認知症では、主に記憶力の低下が特徴的で、最近の出来事を覚えていられない、物の置き場所を忘れるといった症状が目立ちます。一方、糖尿病性認知症では、記憶力の低下よりも注意力や遂行機能の低下が目立ちます。また、アルツハイマー型認知症ではアミロイドβというタンパク質の蓄積が原因の一つとされていますが、糖尿病患者さんではインスリンの作用低下によってこのアミロイドβの分解が妨げられ、脳内に蓄積しやすくなることも分かってきています。
脳血管性認知症とも関連
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって引き起こされる認知症です。糖尿病患者さんでは、高血糖状態が続くことで血管がダメージを受け、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、脳血管障害のリスクが高まり、脳血管性認知症を発症する可能性も上昇します。特徴的なのは、脳血管障害の発症とともに段階的に症状が進行することです。
糖尿病が認知症を引き起こすメカニズム
糖尿病による認知症発症には、主に3つの要因が関係しています。1つ目は血管へのダメージです。高血糖により血管が傷つき、動脈硬化が進行することで、脳への血流が悪くなります。2つ目はインスリン作用の低下です。インスリンには認知症の原因となるアミロイドβを分解する働きがありますが、糖尿病ではこの機能が低下します。3つ目は神経細胞への直接的なダメージです。長期の高血糖状態や、治療中の低血糖発作により、脳の神経細胞が傷つきます。
脳神経内科受診の重要性
糖尿病患者さんにとって、脳神経内科の受診は非常に重要です。なぜなら、脳神経内科では認知症だけでなく、糖尿病による神経障害全般を専門的に診ることができるからです。また、早期に認知機能の低下を発見し、適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせることができる可能性があります。糖尿病患者さんは認知機能低下が気になったら脳神経内科受診を検討しましょう。
まとめ:予防と管理の重要性
糖尿病と認知症の関係は、近年の研究でますます明らかになってきています。糖尿病患者さんは定期的な健康診断を受け、血糖値を適切にコントロールすることが重要です。また、運動不足の解消や、バランスの良い食事、十分な睡眠の確保など、生活習慣の改善も認知症予防に効果があります。特に重要なのは、認知機能の低下を感じたら、早めに脳神経内科を受診することです。早期発見・早期治療により、より良い治療効果が期待できます。糖尿病デーを機会にうめもとクリニックスタッフ全員で糖尿病患者さんの健康について考え、支援していきたいと思います。