院長ブログ:インフルエンザ急増中! ~インフルエンザ治療薬と同時感染について解説~
はじめに
今シーズンのインフルエンザは、例年よりも早く、そして急速に流行が拡大しています。クリニックにも多くの患者様が来院され、可能な限り診療を提供したいと考えておりますが、待ち時間が長くなっておりご迷惑をおかけしております。発熱外来の体制についても随時見直しを行い、利用しやすいようにスタッフ皆で考えております。本日は、最新のインフルエンザ情報と治療法について詳しくお話しいたします。
愛媛県のインフルエンザ流行状況
愛媛県では、インフルエンザの感染が急速に拡大しており、県内の保健所別の報告によると、特に松山市保健所と今治保健所の管内では、警報レベルを超える患者数が報告されています。第49週の定点当たり報告数は、前の週と比較して大幅に増加し、11.42人から28.90人へと急増しました。年齢別の感染状況を見ると、5~9歳が32.1%、10~14歳が29.6%と、学齢期の子どもたちに集中していることがわかります。特に10~14歳の年齢層では、前の週と比べて4.1倍、15~19歳の年齢層では3.8倍に感染者数が急増しています。松山市の公立学校では、インフルエンザの影響が顕著で、12月19日までに小学校18校、中学校2校で学年閉鎖や学級閉鎖の措置が取られています。県立衛生環境研究所は、「過去10年間で最も早く注意報レベルに達しており、全国でもトップレベルの流行状態」と指摘しています。
インフルエンザ治療薬について
インフルエンザ治療薬は、体内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑制し、症状の悪化を防ぐために使用されます。これらの薬は、単なる対症療法ではなく、ウイルスの増殖メカニズムに直接作用することで、感染の進行を抑える重要な役割を果たします。主に「ノイラミニダーゼ阻害薬」と「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」の2種類に分類され、発症から48時間以内に服用することで最も高い効果を発揮します。
タミフル(オセルタミビル)
タミフルは、インフルエンザA型・B型に有効な代表的な内服薬です。オセルタミビルリン酸塩を成分とし、インフルエンザウイルスの増殖を抑制します。成人の場合、1日2回、5日間の服用を行い、カプセルとドライシロップの2種類の形態があります。特に小児や高齢者にも使用可能で、症状の軽減と回復期間の短縮に効果的です。重症化した患者さんにもエビデンスを持っており、使用実績も高い薬です。重症化した患者さんにもエビデンスを持っており、使用実績も高いお薬で、使用されることが多いと思われます。
ゾフルーザ
ゾフルーザは、新しい作用機序を持つ抗インフルエンザ薬で、1回の服用で治療が完了する特徴があります。バロキサビルマルボキシルを有効成分とし、ウイルスの遺伝子複製を抑える「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害」という独自の作用メカニズムを持っています。12歳以上の患者に推奨され、タミフルと比較してもウイルス量を早く減少させる効果が認められています。1回で終了、ウイルス減少効果が高いなど、メリットも多い薬ですが、ゾフルーザに耐性を持つウイルスが一定の割合おり、特に6~11歳は慎重に判断することが求められています。またタミフルよりも薬価が高いことも注意が必要です(タミフルより3割負担で800円ほど薬価が上がります)。
イナビル
イナビルは、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物を成分とする吸入薬です。インフルエンザA型・B型に有効で、10歳以上の患者に対して40mg(2容器)を1回吸入することで治療が完了します。吸入のみで治療できるため、薬を飲むことが苦手な方にも適しています。耐性を持つウイルスの報告も少なく、1回で終了しゾフルーザよりも少し安価で、吸入できる方にはお勧めです。なお、肺炎が疑われる例や気管支喘息合併例では使用すべきでない点には注意が必要です。
トリプルデミックの脅威
今シーズンは、「トリプルデミック」と呼ばれるインフルエンザ、新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎の3つの感染症が同時に流行することが懸念されています。またマイコプラズマ感染症が治癒したと思ったらインフルエンザに感染する「感染症ドミノ」もみられています。症状が似ているため、診断や治療が複雑になることもあり、診断までに時間を要することもあります。当院では3種の検査に対応しており、インフルエンザの治療をしたが改善しない、マイコプラズマ肺炎として治療したが改善しない、という時には同時感染を疑って検査をすることをお勧めしています。
まとめ
手洗い、マスク着用、換気などの基本的な感染対策を徹底することが、自分自身と周囲の人々を守る最も効果的な方法です。体調の変化に注意し、少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。皆さまの健康と安全を心よりお祈りしております。