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院長ブログ:ALSの新薬「ロゼバラミン」が登場 ~9年ぶりの新薬に期待~

[2024.12.01]

はじめに

皆様、おはようございます。今回は、久しぶりに感染症の話から脳神経内科の病気のお話をさせていただきます。先月末から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい治療薬として承認された「ロゼバラミン」が使用可能になり、本剤は約9年ぶりとなるALSの新薬であり、多くの患者様にとって新たな希望となることが期待されています。当院でも今週から取り扱いを開始致します。

 

ALSについて

ALSは運動ニューロンが障害され、重篤な筋萎縮と筋力低下をきたす進行性の難病です。手足の筋力低下や飲み込みの障害が徐々に進行するため、ケアや療養体制の構築が重要です。日本では約1万人の患者様がいらっしゃると推定されています。現在のところ、確立された根治療法はなく、承認されている治療薬も限られているため、新しい治療選択肢の登場が待ち望まれていました。

 

ロゼバラミンの開発経緯

ロゼバラミンの主成分であるメコバラミンは、実は私たちが日常的に使用している「メチコバール」として、すでに末梢性神経障害やビタミンB12欠乏による貧血の治療薬として使用されてきました。1990年代から、高用量のメコバラミンがALSに効果がある可能性が示唆され、研究が進められてきました。2006年からエーザイ社による臨床試験が開始され、2015年に一度承認申請が行われましたが、追加試験が必要との判断により一旦取り下げられました。その後、徳島大学の研究チームによる医師主導治験(JETALS)が実施され、良好な結果が得られたことから、2024年1月に再度承認申請が行われ、今回の承認取得に至りました。

 

臨床研究の結果

JETALSでは、発症から1年以内のALS患者様130名を対象に、16週間にわたる二重盲検比較試験が実施されました。主な結果として:

  • メコバラミン50mg投与群では、プラセボ群と比較して症状の進行が約43%抑制
  • 副作用の発現頻度は、プラセボ群で1.6%、メコバラミン50mg群で7.7%
  • メコバラミン群で見られた副作用は、便秘、注射部位の痛み、発熱、心電図の変化、発疹などほとんどが軽微なもの

 

作用メカニズム

ロゼバラミンがALSに効果を示すメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、以下のような作用が考えられています:

  • 神経保護作用:メコバラミンは、神経変性に関与するホモシステインの働きを抑制することで、神経を保護する可能性があります。
  • 神経修復作用:S-アデノシルメチオニン(SAM)を介して、損傷を受けたタンパク質の修復を促進する可能性があります。
  • 神経軸索再生作用:非臨床研究により、神経の再生を促進する可能性が示唆されています。

 

まとめ

ロゼバラミンの承認は、ALS患者様とそのご家族にとって、大きな希望となる出来事です。特に発症早期の患者様において、症状の進行を抑制する効果が期待できます。ただし、すべての患者様に効果があるわけではなく、また完全な治療薬ではないことにご留意ください。

当院は脳神経内科を担う地域のクリニックとして、神経難病をお持ちの患者様にも、当院でできる最善の治療とケアをご提案させていただきたいと考えています。ご不安やご質問がございましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

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