院長ブログ:高齢者と妊婦さんやお子さんは要注意!早期流行中のRSウイルス最新情報と対策
暖かい日が増えてきましたが、まだまだ寒暖差の大きい季節です。今回は例年と異なる動きを見せている「RSウイルス感染症」について、愛媛県内の最新状況と対策をご紹介します。
2025年の愛媛県・松山市のRSウイルス感染症の流行状況
2025年のRSウイルス感染症は例年と異なる動きを見せています。愛媛県では例年より早く、1月下旬から報告数が増加し始めました。県内の定点当たり報告数は第9週に2.56人、第10週には3.06人と増加傾向にあります。年齢別にみると、1~3歳の子どもが全体の約70%を占めています。特に2歳児の感染報告は第9週から第10週にかけて2倍に増加しており、注意が必要です。松山市内の小児科クリニックでも先月頃から徐々に患者さんが増えているという報告があります。
全国的にも2025年の第1~9週の報告数は継続的に増加しており、過去5年間の同時期と比べて最も多くなっています。このように例年よりも早い時期からRSウイルスが流行しているため、特に乳幼児や高齢者のいるご家庭では注意が必要です。
RSウイルス感染症とは?症状と重症化リスク
RSウイルス(Respiratory Syncytial virus)は非常に感染力が強く、2歳までにほぼすべての子どもが一度は感染するといわれています。主な症状は鼻水、38~39℃の発熱、咳などの風邪に似た症状で、通常は1~2週間程度で治まります。
感染経路は、感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着したドアノブなどを触ることによる接触感染です。大人や年長の子どもは免疫が徐々についているため軽症で済むことが多いですが、乳幼児や高齢者が感染すると重症化するリスクがあります。
特に生後6カ月未満の乳児、低出生体重児、心臓に持病がある小児、基礎疾患のある高齢者の方は注意が必要です。重症化すると細気管支炎や肺炎を起こし、呼吸が苦しくなり「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という音がしたりします。このような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
高齢者とRSウイルス感染症
RSウイルスは子どもだけでなく、実は高齢者にとっても無視できない深刻な脅威となっています。日本では60歳以上の成人において、RSウイルスによって約63,000人が入院し、約4,500人が死亡していると推測されています。
特に肺気腫(COPD)、喘息、心不全、脳血管障害、糖尿病、腎臓病などの基礎疾患がある方や、免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染時に重症化するリスクが高いことが分かっています。
なお、当院では最新のPCR検査技術を用いた検査機器を導入しており、RSウイルスを含む15種類の呼吸器感染症の病原体を20分程度で同時に診断することが可能です。症状が気になる場合は、早めの受診をおすすめします。
RSウイルス感染症予防
RSウイルス感染症には特効薬がなく、主に対症療法で症状を和らげることが中心となります。そのため、予防が非常に重要です。
予防法としては、マスクの着用や手洗い、ドアノブなどよく触れる場所の消毒が基本です。特に乳児は自分で予防行動ができないため、周囲の大人がきちんと対策を講じることが大切です。高齢者の方々も、手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策を心がけることが大切です。
また、2024年から60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー」「アブリスボ」が使用可能となり、RSウイルス感染の発症リスクや入院リスクを大幅に減少させることが期待されています。また、「アブリスボ」は妊娠24~36週(特に28~36週が推奨)の妊婦さんが接種することで、母体にできた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生まれた後のRSウイルス感染症による下気道疾患の発症と重症化を予防することが期待されています。当院は両方のワクチンに対応しており、ご相談を承っておりますので、気になる方はお問い合わせください。
まとめ
2025年のRSウイルス感染症は例年より早くから流行しており、愛媛県内でも感染報告が増加しています。RSウイルスは特に乳幼児や高齢者が重症化しやすいため、十分な注意が必要です。当院ではPCR検査機器による迅速診断や各種ワクチン接種にも対応しておりますので、ご不安なことがございましたらお気軽にご相談ください。