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院長ブログ:妊婦・高齢者に特にお勧めしたい百日咳ワクチン

[2025.05.03]

先日のブログでお伝えした通り、全国的に百日咳の流行が持続しています。百日咳というと子どもの病気というイメージがありますが、実は大人も感染し、さらに周囲への感染源になることもあります。今回は成人、特に妊婦さんと高齢者の百日咳ワクチン接種について、最新情報をご紹介します。

 

なぜ成人の百日咳ワクチン接種が必要なのか

「子どもの頃にワクチンを接種したから大丈夫」と思われる方も多いかもしれませんが、子どもの頃に受けた予防接種の効果は次第に弱まっていきます。4~12年で減弱するとされているため、いったん予防接種を受けた方でも、大人になって百日咳にかかる可能性があるのです。

大人が百日咳にかかると、長く続く咳によって日常生活の質が低下するだけでなく、気づかないうちに家族や周囲の人に感染を広げてしまう恐れがあります。特に心配なのは、まだワクチン接種が完了していない乳児や、免疫力が低下している高齢者への感染です。乳児が百日咳にかかると重症化しやすく、命に関わることもあります。

このような理由から、近年では大人の百日咳ワクチン追加接種の重要性が認識されるようになってきました。



成人の百日咳ワクチン – 接種が推奨される対象者とタイミング

百日咳ワクチン接種または罹患から10年以上経っている成人は百日咳含有ワクチンの追加接種を検討する価値があります。特に以下の方々は優先度が高いとされています:

・乳児と接触する可能性のある方(両親、祖父母、兄弟など)
・妊婦さんとそのご家族
・医療従事者
・免疫機能が低下している方
・長期間ワクチン接種を受けていない方


接種のタイミングについては、小児期の最後の接種から10年以上経過している場合や、百日咳の流行時期には接種を検討することが良いでしょう。日本では現在、成人に接種可能な百日咳ワクチンとして「トリビック」という三種混合ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風)が使用されています。このワクチンは元々小児用に開発されたものですが、現在は成人への接種も認められています。



妊婦さんと家族の百日咳ワクチン – 赤ちゃんを守るために

乳児、特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんが百日咳にかかると重症化し、命に関わる危険があります。しかし、赤ちゃんは生後2ヶ月頃から予防接種を始めるため、それまでは無防備な状態です。

そこで重要になるのが、妊婦さんのワクチン接種です。妊娠中にワクチンを接種することで、二つの大きな効果が期待できます:

①母親自身が感染を予防し、生まれた赤ちゃんに感染させるリスクを減らす
②妊娠中に作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生まれた後も赤ちゃんを守る

欧米では妊婦さんへの百日咳ワクチン接種が積極的に推奨されており、日本の産婦人科学会でも、妊婦さんへのワクチン接種の在り方を検討中です。免疫移行を考えると、妊娠27~36週頃が接種の適期とされています。

また、ご家族の方(特に父親や祖父母など)もワクチンを打てない赤ちゃんを繭(まゆ)のように守る 「守りの輪」(コクーニング)を作るために、ワクチン接種を検討することが推奨されています。

 


高齢者の百日咳ワクチン

加齢とともに免疫力は低下し、感染症にかかりやすく、また重症化しやすくなります。高齢者が百日咳に感染すると、長期間の激しい咳により、睡眠障害、肋骨骨折、尿失禁などの合併症を引き起こすリスクがあります。

また、高齢者は他の慢性疾患(心臓病、糖尿病、肺疾患など)を持っていることも多く、そのような場合は特に感染症の重症化リスクが高まります。そのため、高齢者においても百日咳含有ワクチンの接種を検討することは、健康維持の観点から重要です。

百日咳に限らず、高齢者の方々には年齢が上がるにつれて、さまざまなワクチン接種を怠らないことが推奨されています。ご自身の健康を守るだけでなく、周囲の方々、特に抵抗力の弱い小さな子どもたちを守ることにもつながります。

 


当院での百日咳ワクチン接種について

うめもとクリニックでは、大人の百日咳予防のための三種混合ワクチン「トリビック」の接種を行っています。このワクチンは百日咳、ジフテリア、破傷風の予防に効果があります。

【接種対象者】

成人(特に10年以上ワクチン接種を受けていない方)、乳児と接触する機会のある方(家族、祖父母など)、妊婦さんとそのご家族、医療従事者、高齢者の方など

【ワクチンについて】

トリビックは国産ワクチンで、もともと小児用に開発されましたが、2018年以降は成人にも接種が可能となっています。接種部位の腫れや発熱などの副反応が見られることがありますが、通常は数日で軽快します。

【接種費用】

4950円(自費診療となります)

【ご予約方法】

接種をご希望の方は事前にお電話(089-976-1277)または問い合わせからご予約ください。ワクチンの在庫状況により、取り寄せが必要な場合がありますので、余裕をもってご予約いただければ幸いです。

【ご注意事項】

妊婦の方は予め産科の主治医の先生に百日咳ワクチンの接種の許可を頂いてからご予約ください。

 

まとめ

百日咳は「子どもの病気」というイメージがありますが、大人も感染し、さらに感染を広げる源となることがあります。特に流行期において、免疫力が低下している方、乳児と接触する機会のある方、妊婦さんとそのご家族、医療従事者、高齢者の方などは、百日咳ワクチンの接種を検討されることをお勧めします。

ワクチン接種は自分自身を守るだけでなく、大切な家族や周囲の人々、特に抵抗力の弱い赤ちゃんや高齢者を守ることにもつながります。百日咳ワクチン接種をご検討の方は、ご相談ください。

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