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院長ブログ臨時便:麻疹と麻疹ワクチンについて

[2024.03.17]

昨今の麻疹流行の兆しの報道を受け、当クリニックにも麻疹ワクチンについてのお問合せが増加しております。クリニックスタッフや通院患者様の安全確保のため、先日、クリニックのスタッフは麻疹抗体測定を行いました。今回は臨時ブログとして、麻疹と予防接種について紹介します。

先にワクチン接種が必要か知りたい方はこちら

 

 

麻疹について

麻疹は、一般的には「はしか」とも呼ばれ、麻疹ウイルスによる感染症です。咳嗽、鼻汁、結膜炎などの症状が現れ、顔面や耳の後ろから始まり、体幹や四肢に広がる発疹が特徴です。潜伏期間は通常10日間(8~12日)であり、この期間に曝露歴があることがあります。感染経路は主に空気感染ですが、接触、飛沫などいずれの感染経路でも感染します。麻疹ウイルスの直径は100~250nmと非常に小さく空中を浮遊しており、それを吸い込むことで感染しますので、マスクでの予防は難しくなります。感染力が高いですが、ワクチン接種によって防げる感染症でもあります。

麻疹の症状

麻疹ウイルスに感染すると、10日間程度の潜伏期の後に発熱や咳などの症状が現れます。発熱は38℃前後で2~4日間続き、倦怠感や上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみ)や結膜炎症状(目の充血、目やに、光をまぶしく感じる)が出現し、次第に強くなります(この時期は風邪と見分けがつけることができません)。発疹が現れる1~2日前には口の中の頬の裏側に小さな白色の斑点(コプリック斑)が出現しますが、発疹出現後2日目までに消えてしまいます。その後は再び高熱と共に全身に発疹が広がります(ここで麻疹と診断されることが多いです)。発疹は徐々に退色し、回復期に入ると主な症状は解消されます。麻疹は通常の風邪よりも合併症による死亡率が高く、また合併症がなくても入院を要することがあります。

 

麻疹の合併症

麻疹の合併症の中でも最も注意が必要なのは肺炎や脳炎です。合併症の約半数が肺炎で、頻度は低いものの脳炎の合併例もあり、特にこの二つの合併症は麻疹による二大死因となり、注意が必要です。肺炎にはウイルス性、細菌性、巨細胞性の3種類があり、脳炎や中耳炎、クループ症候群、心筋炎なども合併することがあります。脳炎の発生頻度は低いですが、重篤で後遺症を残すこともあります。さらに、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という進行性の中枢神経障害も発生する可能性があります。

 

麻疹の診断

麻疹の診断は以下のような臨床症状を確認して行われます。

  • 潜伏期間に曝露歴があること
  • コプリック斑の有無
  • 上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみ)や結膜炎症状(目の充血、目やに、光をまぶしく感じる)があること
  • 顔面や耳の後ろから始まり、体幹や四肢に広がる発疹が認められること

検査としては以下の方法があります。

  • 麻疹IgM抗体の上昇を確認する
  • ペア血清検査で麻疹中和抗体の4倍以上の上昇を確認する(NT法もしくはPA法)
  • 咽頭ぬぐい液、全血、尿のPCR検査で陽性を確認する(保健所の指示で行われます)

 

麻疹の治療

特異的な治療はなく、症状に応じた対症療法になります。麻疹患者に曝露した場合には、72時間以内のワクチン接種が効果的であるとされています。

 

麻疹の予防接種(ワクチン)

麻疹は感染力が高いですが、ワクチンによって防げる感染症であるため、感染リスクを低減し、重症化を防ぐことができます。ご自身の感染歴やワクチン接種歴を確認し、麻疹の予防接種を受けることが重要です。小児期の定期接種の記録は母子手帳を確認してください。

 

年齢でみるワクチン接種回数

年齢と病気にかかったことがあるかどうかで、ワクチンの必要回数が異なりますので、以下の表を参考にしてください。

1972年9月30日以前生まれ(今年52歳以上) 1回も接種していない可能性が高いため、確実に麻疹に感染したことがある方以外はワクチン接種を推奨
1972年10月1日~1990年4月1日生まれ(今年33~52歳) 定期接種1回の世代のため、抗体検査か追加接種1回を推奨
1990年4月2日~2000年4月1日生まれ(今年23~33歳) 対象時期に2回接種を受けていなければ、抗体検査か追加接種1回を推奨
2000年3月31日以前生まれ(今年23歳以下) 定期接種を受けていれば2回接種されています。

 

麻疹ワクチン接種回数と感染歴からみた感染対策

麻疹のワクチン接種が必要かどうかについては、接種回数と感染したことがあるかで以下のように対応をしましょう。

①麻疹ワクチン接種をしたことがないか不明、かつ麻疹に感染したことがないか不明の方

ワクチン接種、もしくは抗体測定を行い抗体が陰性であればワクチン接種

②麻疹ワクチン接種が1回のみ、かつ麻疹に感染したことがないか不明の方

ワクチン接種の追加接種を行うか、まず抗体測定をしてワクチン接種の必要性を判断(抗体が陽性であれば追加接種不要)

③麻疹ワクチン接種2回、または確実に麻疹に感染したことがある

ワクチン接種不要(抗体検査の必要性は低いですが、心配であれば抗体測定を)

 

※現在、麻疹単独ワクチンは流通していないため、MR(麻疹風疹混合)ワクチンになります。

※MRワクチン、ワクチン接種判定や症状のない方の抗体検査は自費診療となります。

まとめ

麻疹は感染力が非常に高く、合併症や後遺症が重篤な場合があるため、抗体の有無の確認、予防接種を受けることが重要です。特に乳幼児や高齢者、免疫不全の方、妊婦の方などは注意しましょう。麻疹抗体検査やMRワクチン接種のご希望がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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