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院長ブログ:激症型溶連菌感染症にご注意を!

[2024.08.04]

溶連菌感染症と激症型溶連菌感染症について

昨日は松山市急患センターで夜間診療を行っておりました。相変わらず、新型コロナウイルス感染症が多いのですが、溶連菌感染症の患者さんもいらっしゃいます。今日は最近ニュースでも耳にすることがある、激症型溶連菌感染症について紹介します。

 

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症は、主にA群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)によって引き起こされる感染症です。一般的には、のどの痛みや発熱が主な症状として現れます。特に子供に多く見られますが、大人でも感染することがあります。溶連菌感染症の診断には、迅速抗原検査や咽頭培養検査が用いられ、迅速抗原検査は、5分から10分で結果が出るため、診断が迅速に行える利点があります。抗生物質で治療が可能で数日で症状が改善するのですが、適切な治療を行わないとリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こすことがあります。

激症型溶連菌感染症とは

激症型溶連菌感染症(Streptococcal Toxic Shock-like Syndrome: STSS)は、溶連菌感染症の中でも特に重症の病態です。原因は同じ溶連菌ですが、子どもさんより成人に多く、突然の発熱や手足の痛みから始まり、急速に全身に広がり、多臓器不全を引き起こすことがあります。発症から数時間以内に症状が急激に進行するため、早期の診断と治療が非常に重要です。治療には、抗生物質の投与とともに、集中治療が必要となることが多いです。

激症型溶連菌感染症になりやすい人の特徴

激症型溶連菌感染症(STSS)は特定のリスク因子を持つ人々に発症しやすいとされています。特に、高齢者や糖尿病患者、アルコール依存症の人々、外科的処置後や外傷後の人々がリスクが高いとされています。また、新生児や水痘(水ぼうそう)に罹患したことがある人もリスクが高いです。これらの人々は、免疫力が低下していることが多く、感染症に対する抵抗力が弱いため、STSSにかかりやすい傾向があります。さらに、NSAIDs(ロキソニンなど)の使用もリスクを高める要因とされています。これらのリスク因子を持つ人々は、特に感染予防に努めることが重要です。

妊婦における激症型溶連菌感染症

妊娠中の女性は、特に免疫が低下しているため、激症型溶連菌感染症(STSS)の危険性が増します。最近の調査によると、日本でも2023年7月から2024年3月にかけて、妊産婦5人の死亡が確認されており、これは上気道からの感染によるものが多いとされています。感染症は急速に進行し、腹痛や出血を伴い、早産や死産になるリスクが大きいです。そのため、妊婦がのどに痛みや発熱などの異常を感じた場合は、早急に医療機関を受診し、必要に応じて抗菌薬の投与を受けることが重要です。また、周囲に感染者がいる場合は、その旨を医師に伝えることが勧められています。

愛媛県での激症型溶連菌感染症の報告

最近の愛媛県における激症型溶連菌感染症の報告によると、感染者数は増加傾向にあります。新型コロナウイルス感染症時に流行がなかった影響ではないかと考えられています。特に、松山市を中心に感染が広がっており、注意が必要です。愛媛県感染症情報センターによると、2024年の初めから中旬にかけて、激症型溶連菌感染症の報告が急増しており、県内の医療機関では警戒を強めています。

溶連菌感染症と激症型溶連菌感染症の見分け方

溶連菌感染症と激症型溶連菌感染症を見分けるためには、以下のポイントに注意することが重要です。

  • 発熱と痛みの程度:溶連菌感染症では、38℃以上の発熱とのどの痛みが主な症状ですが、激症型溶連菌感染症では、これに加えて手足の激しい痛みや全身の倦怠感が見られます。
  • 症状の進行速度:溶連菌感染症は比較的ゆっくりと症状が進行するのに対し、激症型溶連菌感染症は数時間以内に急激に症状が悪化します。
  • 全身症状:激症型溶連菌感染症では、血圧の低下や多臓器不全などの全身症状が現れることが多く、普通の風邪とは異なる「重篤感」が違いです。

まとめ

激症型溶連菌感染症は、急速に症状が進行し、全身に影響を及ぼす重篤な感染症です。愛媛県では、最近の報告により感染者数が増加しているため、注意が必要です。症状の違いを理解し、早期に医療機関を受診することが重要です。うめもとクリニックでは溶連菌感染症の診断、治療も行っておりますので、体調に不安のある方はご相談ください。

 

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